地域統合と冷戦後の地域紛争
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領「歴史総合」D (3) ア (イ) の「……地域統合の拡大と変容,地域紛争の拡散とそれへの対応などを基に,冷戦終結後の国際政治の変容と課題を理解すること」。
内容の取扱いは、冷戦終結後も残された課題と新たに生じた課題に目を向け、国家間の対立だけでなく民族対立の拡大や、
武装集団によるテロ行為を契機として戦争が生じるなど、地域紛争の要因が多様化していることを扱うよう求めています。
EU の発足とイギリスの離脱の年、加盟国の数は 2026-09-27 に外務省の「欧州連合(EU)概況」「EU加盟国」と突き合わせました。
0. 何を押さえるか
冷戦が終わると、ヨーロッパや北米・アジア太平洋では国境を越えて経済や政治を結びつける地域統合が進みました。
一方で、東西対立の重しが外れたことで、それまで抑えられていた民族や宗教の対立が表に出て、地域紛争の拡散が起こります。
21 世紀に入ると、国家ではない武装集団のテロ行為が、大国の戦争の引き金になりました。
| 冷戦期の紛争 | 冷戦後の紛争 | |
|---|---|---|
| 主な対立の軸 | 米ソの陣営どうし(代理戦争) | 民族・宗教の違い、国家の解体、武装集団のテロ |
| 例 | 朝鮮戦争・ベトナム戦争 | ユーゴスラヴィア紛争・ルワンダ内戦・同時多発テロ後の戦争 |
| 国連の動き | 安全保障理事会が拒否権で動きにくい | 湾岸戦争で武力行使を容認するなど、動く場面が増えた |
EU の加盟国数は、2020 年 1 月末のイギリス離脱によって 27 か国になり、2026 年 9 月時点でも 27 か国です(加盟国の数は拡大で変わるので、カードにはしていません)。
取り違えやすい分かれ目は次の 3 つ。
- EC(ヨーロッパ共同体)が EU(ヨーロッパ連合)になったのはマーストリヒト条約の発効(1993)。共通通貨ユーロの導入(1999)はその後
- 湾岸戦争(1991)は国連安全保障理事会の決議に基づく多国籍軍、イラク戦争(2003)はアメリカ・イギリスなどが新たな安保理決議なしに始めた。同じイラクが相手でも性格が違う
- ボスニア紛争は 1990 年代前半(1992〜95)、コソヴォ紛争は 1990 年代末(1999 年に NATO の空爆)。どちらも旧ユーゴスラヴィア
1. 地域統合の拡大と変容
根拠: 学習指導要領 歴史総合-D-(3)-ア-(イ)
地域統合は、関税をなくして市場を 1 つにする経済の結びつきから始まり、ヨーロッパでは通貨や外交・安全保障にまで広がりました。
冷戦後は旧東側の国々も加わって拡大しますが、2010 年代には加盟国の内側から統合への反発も生まれます。
EC(ヨーロッパ共同体)を EU(ヨーロッパ連合)へ発展させた、1992 年に調印され 1993 年に発効した条約は?
マーストリヒト条約(ヨーロッパ連合条約)
経済・通貨の統合に加え、共通の外交・安全保障政策や、加盟国の国民に共通の EU 市民権を定めた。
1999 年に EU の多くの加盟国で導入された共通通貨は?
ユーロ
1999 年はまず銀行どうしの取引などで使われ、紙幣と硬貨が出回ったのは 2002 年から。
2004 年に EU へ加盟した国々の中心となったのは、冷戦期にどちらの陣営だった国々か?
東側(社会主義陣営)の中・東欧の国々
ポーランド・チェコ・ハンガリーやバルト 3 国などが加わった。冷戦終結によって、ヨーロッパの東西の境目を越えて統合が広がった。
2016 年の国民投票で EU からの離脱を決め、2020 年に離脱した国は?
イギリス
移民の増加や EU のルールへの反発が背景にあった。拡大してきた地域統合が、初めて加盟国を減らす形で変容した。
1994 年にアメリカ・カナダ・メキシコの 3 か国で発足した自由貿易協定は?
北米自由貿易協定(NAFTA)
2020 年に新しい協定(USMCA)に引き継がれた。アジア太平洋では 1989 年にアジア太平洋経済協力(APEC)が発足している。
2. 地域紛争の拡散とそれへの対応
根拠: 学習指導要領 歴史総合-D-(3)-ア-(イ)
冷戦後の最初の大きな戦争は、国家どうしの侵略をめぐる湾岸戦争でした。しかし 1990 年代の紛争の多くは国内の民族対立から起こり、
国家が解体する過程で激しい戦闘と住民の追放が起こりました。ルワンダやボスニアの犠牲者の数は資料によって開きが大きく、ここではカードにしていません。
1990 年のイラクによるクウェート侵攻に対し、1991 年に国連安全保障理事会の決議に基づいてアメリカを中心とする多国籍軍がイラクを攻撃した戦争は?
湾岸戦争
冷戦中は米ソの対立で動きにくかった安全保障理事会が、武力行使を認める決議を出した。
冷戦後に複数の共和国が独立を宣言して解体し、民族・宗教の違う住民どうしの内戦が続いた東ヨーロッパの国は?
ユーゴスラヴィア(ユーゴスラヴィア社会主義連邦共和国)
1991 年にスロヴェニアとクロアチアが独立を宣言し、1992 年からはボスニア・ヘルツェゴヴィナで内戦が激しくなった。
ボスニア・ヘルツェゴヴィナの内戦(1992〜95 年)で対立したのは、主にどの 3 つの勢力か?
セルビア人・クロアチア人・ムスリム(ボシュニャク人)
宗教ではそれぞれ主にセルビア正教・カトリック・イスラーム教を信仰する。1995 年の和平合意(デイトン合意)で停戦した。
1999 年、セルビア領内のコソヴォでアルバニア系住民への弾圧が問題となり、NATO が国連安保理の決議なしに行った軍事行動は?
セルビア(ユーゴスラヴィア連邦)への空爆
人道上の理由から武力を使う「人道的介入」の是非が議論になった。コソヴォは 2008 年に独立を宣言した。
冷戦後の地域紛争の要因は、冷戦期と比べてどのように変わったか?
国家間の対立だけでなく、民族対立や宗教の違い、武装集団のテロ行為などへと多様化した
国家の枠をこえた対立は、交渉の相手や停戦の当事者をはっきりさせにくく、解決を難しくしている。
3. テロ行為と戦争
根拠: 学習指導要領 歴史総合-D-(3)-ア-(イ)
2001 年、国家ではない武装集団のテロ行為が、アメリカによる戦争の引き金になりました。国家と国家の戦争を前提にしてきた国際秩序にとって、新しい種類の課題です。
2001 年 9 月 11 日、ハイジャックされた旅客機がニューヨークの世界貿易センタービルなどに突入した事件を何という?
同時多発テロ(アメリカ同時多発テロ事件)
アメリカ政府は、イスラーム急進派の武装組織アル=カーイダによるテロ行為と断定した。
同時多発テロのあと、2001 年にアメリカがアル=カーイダをかくまったとして攻撃した国と、倒れた政権は?
アフガニスタンのターリバーン政権
テロ行為を契機として戦争が始まった例。アメリカ軍は 2021 年に撤退し、ターリバーンが再び権力を握った。
2003 年、アメリカ・イギリスなどが「大量破壊兵器を保有している」としてイラクを攻撃し、フセイン政権を倒した戦争は?
イラク戦争
開戦を認める新たな安保理決議はなく、フランス・ドイツなどは反対した。戦後、大量破壊兵器は見つからなかった。