ベクトルの意味と演算
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 数学C (1) ベクトル ア (ア)「平面上のベクトルの意味,相等,和,差,実数倍,位置ベクトル,ベクトルの成分表示について理解すること。」。
0. どういうまとまりか
速度や力のように、向きと大きさの両方で決まる量があります。これを矢印(有向線分)で表し、位置の違いを無視して向きと大きさだけに注目したものがベクトルです。
ベクトルどうしは足したり引いたり、実数を掛けたりできます。この単元では、その計算の決まりを図の上で押さえます。
| 演算 | 図での意味 | 式 |
|---|---|---|
| 和 | 矢印をつぎ足す(三角形)・始点をそろえて対角線(平行四辺形) | |
| 差 | 始点をそろえて、引くほうの終点から引かれるほうの終点へ | |
| 実数倍 | 向きは同じか反対、大きさを 倍 |
分かれ目は次の 3 つ。
- ベクトルは位置を問わない。向きと大きさが同じなら、どこにあっても等しいベクトル
- 差は「後ろ引く前」。 で、終点のほうから始点のほうを引く
- 平行でない 2 つのベクトルがあれば、平面上のどのベクトルもその 2 つでただ 1 通りに表せる
1. ベクトルの意味
根拠: 学習指導要領 数学C-(1)-ア-(ア)
点 から点 へ向かう矢印を考えると、「どちら向きに」「どれだけ」動くかが決まります。どこから出発するかは問いません。
有向線分とは何か? また、有向線分 の始点と終点は?
向きをつけた線分。 が始点、 が終点
線分 に「 から へ」という向きをつけたもの。位置・向き・大きさ(長さ)の 3 つで決まる。
ベクトルとは何か? 有向線分とどこが違うか?
向きと大きさだけで決まる量。有向線分から位置の違いを無視したもの
有向線分 が表すベクトルを と書く。1 つの文字で のようにも書く。大きさは と書き、 は線分 の長さに等しい。
2 つのベクトル 、 が等しい()とは?
向きが同じで、大きさも等しいこと
位置は問わない。 なら、有向線分 を平行移動すると に重なる(4 点が一直線上になければ、四角形 は平行四辺形になる)。
の逆ベクトルとは? の逆ベクトルは?
大きさが同じで向きが反対のベクトル 。
始点と終点を入れかえると逆ベクトルになる。
零ベクトル とは?
始点と終点が一致したベクトル 。大きさは 0 で、向きは考えない
、 が成り立つ。数の 0 と区別して矢印をつけて書く。
2. 和と差
根拠: 学習指導要領 数学C-(1)-ア-(ア)
「 から へ動き、続けて から へ動く」と、結果は「 から へ動く」のと同じです。これがベクトルの和です。
ベクトルの和 を、矢印をつぎ足して作るには?(三角形の方法)
、 となるように の終点に の始点を重ねる。
。前の終点と後ろの始点が同じ文字なら、その文字が消えると見ればよい。
ベクトルの和 を、始点をそろえて作るには?(平行四辺形の方法)
、 として平行四辺形 を作る。(対角線)
なので、三角形の方法と同じ結果になる。
ベクトルの差 は、どのベクトルか?
を移項したもの。始点をそろえた 2 つのベクトルの差は、引くほうの終点 から引かれるほうの終点 へ向かう。
和については、交換法則 と結合法則 が成り立ちます。
3. 実数倍と平行
根拠: 学習指導要領 数学C-(1)-ア-(ア)
ベクトルに実数を掛けると、向きはそのまま(または反対)で、大きさだけが変わります。これを実数倍といいます。
実数倍についても 、、 が成り立つので、ベクトルの式は文字式と同じように計算できます。
のとき、 の実数倍 はどんなベクトルか?
なら と同じ向きで大きさ 倍、 なら反対の向きで大きさ 倍、 なら
大きさは 。 は逆ベクトル。
でない 2 つのベクトル 、 が平行()になる条件は?
となる実数 があること
平行とは、向きが同じか反対であること。 なら同じ向き、 なら反対の向き。
単位ベクトルとは? と同じ向きの単位ベクトルは?
大きさが 1 のベクトル。 と同じ向きの単位ベクトルは
自分の大きさで割ると大きさが 1 になる。 に平行な単位ベクトルは、反対向きの と合わせて 2 つある。
4. ベクトルの分解
根拠: 学習指導要領 数学C-(1)-ア-(ア)
平行でない 2 つのベクトルを「ものさし」にすると、平面上のどのベクトルも、その 2 つの実数倍の和で表せます。
、 がどちらも でなく平行でもないとき、平面上の任意のベクトル はどう表せるか?
の形に、ただ 1 通りに表せる(、 は実数)
このとき と は 1 次独立であるという。 を の方向と の方向に分けることを、ベクトルの分解という。
、 が 1 次独立( でなく平行でない)のとき、 から何がいえるか?
かつ (係数が比較できる)
表し方がただ 1 通りだから。特に なら 。「1 次独立だから」と断ってから係数を比べる。
練習問題
問 1 次の式を簡単にせよ。(1) (2)
(1) (2)
方針 ベクトルの和・差・実数倍は、文字式と同じ決まりで計算できる。(1)はかっこを外して、 どうし・ どうしをまとめる。(2)は文字式のようにはまとめられないので、「前の終点と後ろの始点が同じ文字なら、矢印をつぎ足せる」ことを使う。
- (1)前のかっこを外す。
- 後ろのかっこを外す。 を両方の項に掛けるので、
- 2 つを並べる。
- の係数は 、 の係数は なので、
- (2)前の 2 つをつぎ足す。 の終点と の始点がどちらも なので、
- 残りをつぎ足す。 の終点と の始点がどちらも なので、
- 始点と終点が一致したベクトルは零ベクトルなので、。 から出てひと回りして に戻ると、動いていないのと同じになる。
ここで間違えやすい (2)の答えは数の 0 ではなく、矢印をつけた と書く。
問 2 等式 を満たす を、、 で表せ。
方針 ベクトルの等式も、1 次方程式と同じように移項したり、両辺を同じ数で割ったりできる。求めたい を左辺に、それ以外を右辺に集める。
- 右辺の を左辺へ、左辺の を右辺へ移項する。移項すると符号が変わるので、
- 左辺をまとめる。 の係数は なので、
- 両辺を 2 で割る。右辺は 2 つの項をどちらも 2 で割るので、
問 3 正六角形 の中心を とし、、 とする。、、、 を 、 で表せ。
、、、
方針 正六角形は、中心 と各頂点を結ぶと 6 つの正三角形に分かれる。だから、辺と「中心と頂点を結ぶ線分」はすべて同じ長さで、平行なものがいくつもある。ベクトルは位置を問わないので、求めるベクトルと等しいベクトル(平行で同じ向き・同じ長さ)を探し、 と のつぎ足しや差に直す。
- を求める。四角形 は 4 辺の長さが等しいひし形(平行四辺形)で、 から出る 2 辺が 、 なので、対角線は和になる。
- を求める。 は対角線 の中点なので、
- 手順 1 の結果を入れて、
- を求める。 を経由して と分ける。
- 四角形 もひし形で、 と は平行で同じ向き・同じ長さなので、
- 手順 4 に入れて、
- を求める。 と はどちらも と平行で同じ向き・同じ長さなので、四角形 は平行四辺形。向かい合う辺から
- は始点を にそろえた差で出せる。 なので、
問 4 平行四辺形 で、、 とし、辺 の中点を とする。、、、 を 、 で表せ。
、、、
方針 平行四辺形では、向かい合う辺のベクトルが等しい()。これを使って、求めるベクトルを「、 で書ける道のり」のつぎ足しに分ける。始点が でないベクトルは、始点を にそろえた差(後ろ引く前)で出す。
- は を経由して分ける。
- 向かい合う辺なので 。よって
- は始点を にそろえた差で出す。終点 のほうから始点 のほうを引いて、
- は辺 の中点なので、
- は を経由して分ける。
- も始点を にそろえた差で出す。
- かっこを外してまとめる。 の係数は なので、
ここで間違えやすい 手順 6 のかっこを外すとき、 にも にもマイナスがかかる。 としてしまうと の係数が になって誤り。
問 5 、 は でなく、平行でもないとする。 と が平行になるような実数 の値を求めよ。
方針 2 つのベクトルが平行になる条件は、「一方がもう一方の実数倍になる」こと。そこで とおき、両辺を 、 の式にして係数を比べる。係数を比べてよいのは、、 が 1 次独立( でなく平行でない)で、表し方がただ 1 通りだからである。
- となる実数 があるとして、式に書く。
- 右辺のかっこを外す。
- 、 は でなく平行でもない(1 次独立)から、両辺の係数が等しい。 の係数から 、 の係数から
- を に代入して、
- 確かめ。 のとき で、確かに の実数倍になっている。
ここで間違えやすい 「1 次独立だから」を断らずに係数を比べない。 と が平行だと、係数が違っても同じベクトルになることがあり、係数は比べられない。
問 6 のとき、 に平行な単位ベクトルと、 と同じ向きで大きさが 6 のベクトルを、 で表せ。
単位ベクトルは と 。大きさ 6 のベクトルは
方針 ベクトルを 倍すると、大きさは 倍になる。大きさ 4 のベクトルを大きさ 1 にしたいので、4 で割る( 倍する)。大きさ 6 のベクトルは、いったん大きさ 1 にした単位ベクトルを 6 倍して作る。
- を 倍する。大きさは になるので、 は と同じ向きの単位ベクトル。
- 「平行」には反対の向きも含まれる。 も大きさが なので、これも答えになる。
- 大きさ 6 のベクトルを作る。同じ向きの単位ベクトル を 6 倍して、
- 確かめ。 の大きさは で、確かに 6 になっている。
ここで間違えやすい 「平行な」単位ベクトルは同じ向きと反対の向きの 2 つ、「同じ向きの」ベクトルは 1 つ。問いの言葉で答えの個数が変わる。