期待値と分散の性質
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 数学B (2) 統計的な推測 ア (イ)「確率変数と確率分布について理解すること。」。
0. どういうまとまりか
確率変数 を 1 次式で変換した や、2 つの確率変数の和 の期待値(平均)・分散は、分布の表を作り直さなくても、元の値から求められます。
ただし、和の期待値はいつでも足せるのに、和の分散は独立なときしか足せないという違いがあります。
| 期待値 | 分散 | 標準偏差 | |
|---|---|---|---|
| (いつでも) | (一般には足せない) | ||
| (独立なとき) | |||
| (独立なとき) |
分かれ目は次の 3 つ。
- の分散に は効かない(全体をずらしても散らばりは変わらない)。 は 2 乗で効く
- は独立でなくても成り立つ。独立が要るのは と
- 独立なら も (引いても散らばりは足される)
1. aX+b の期待値・分散・標準偏差
根拠: 学習指導要領 数学B-(2)-ア-(イ)
得点を 2 倍して 3 点を加える、温度の単位を換える、のように確率変数 を に変換したときの期待値・分散・標準偏差です。
確率変数 と定数 、 について、 は?
で、確率の和 を使う。
と は?
、
平均からのずれが 倍になるので、ずれの 2 乗は 倍。標準偏差は正の平方根なので に絶対値がつく。
に が出てこないのはなぜか?
を足すと、すべての値と平均が同じだけずれ、平均からのずれ は変わらないから
分布全体を平行移動しても、散らばり具合は変わらない。
さいころの出る目 (、)について、 の期待値と分散は?
、
。。。
平均 、標準偏差 の確率変数 に対し、 の期待値と標準偏差は?
、
と見て 1 次式の性質を使う。、。この変換を標準化という。
2. 同時分布と和の期待値
根拠: 学習指導要領 数学B-(2)-ア-(イ)
2 つの確率変数 、 を同時に考えるときは、 かつ となる確率 の表を作ります。
2 つの確率変数 、 の同時分布とは?
のとる値と のとる値の組 と、 かつ となる確率 との対応
縦に の値、横に の値をとった表にする。行ごとの和が の確率分布、列ごとの和が の確率分布になる。
は、 と が独立でなくても成り立つか?
成り立つ(どんな 、 についても成り立つ)
同時分布で を の部分と の部分に分けると、それぞれ 、 になる。3 つ以上の和でも同じ。
3. 独立な確率変数
根拠: 学習指導要領 数学B-(2)-ア-(イ)
一方の値が何であっても、もう一方の値の出方が変わらないとき、2 つの確率変数は独立です。独立なときに限って、積の期待値と和の分散が簡単になります。
確率変数 と が独立であるとは?
のとるどの値 と のとるどの値 についても、 が成り立つこと
1 組でも成り立たない があれば、独立ではない。2 つの独立な試行の結果で決まる 、 は独立。
と が独立なとき、 は?
独立でないときは一般に成り立たない。同時分布から を計算する。
と が独立なとき、 は?
を展開すると、余分に残るのが 。独立ならこれが 0 になる。
と が独立なとき、 は か?
違う。
で、。差をとっても、散らばりは打ち消し合わずに足される。
練習問題
問 1 確率変数 の期待値が 3、分散が 4 である。 の期待値・分散・標準偏差を求めよ。
、、
方針 は の 1 次式 (、)なので、 の分布を作り直さなくても、 の期待値と分散から求められる。期待値は 、分散は 、標準偏差は を使う。
- 期待値は、 の期待値 3 を 倍して 5 を足す。
- 分散は、 の分散 4 に の 2 乗を掛ける。 は効かない。
- の標準偏差は分散の正の平方根なので、
- 標準偏差は、 の絶対値を掛ける。
- 確かめ。分散 16 の正の平方根をとっても で、同じ値になる。
ここで間違えやすい 分散に掛かるのは ではなく 。 をそのまま掛けて負の分散にしない。また、足した 5 は全体をずらすだけなので、分散にも標準偏差にも出てこない。
問 2 大小 2 個のさいころを投げ、出る目の和を とする。 の期待値と分散を求めよ。
、
方針 和の確率分布(2 から 12 まで)を作るのではなく、 を「さいころ 1 個の目」2 つの和に分ける。期待値は和の性質でいつでも足せる。分散は、2 個のさいころの目が独立なので足せる。
- 大きいさいころの目を 、小さいさいころの目を とすると、
- さいころ 1 個の目の期待値を求める。どの目も確率 なので、
- さいころ 1 個の目を 2 乗したものの平均は、
- さいころ 1 個の目の分散は、「2 乗の平均」−「平均の 2 乗」で、
- 和の期待値は期待値の和なので、
- 一方のさいころの目は、もう一方の目の出方に影響しないので、 と は独立。独立なら分散も足せるので、
ここで間違えやすい 期待値は独立でなくても足せるが、分散が足せるのは独立なときだけ。分散を足す前に、独立であることを一言確かめる。
和の確率分布(2 から 12 まで 11 通りの値)を作って計算しても同じ結果になるが、ずっと手間がかかる。
問 3 100 円硬貨 1 枚と 10 円硬貨 1 枚を同時に投げ、表が出た硬貨の金額の合計を 円とする。 の期待値と分散を、2 通りの方法で求めよ。
、
方針 1 つ目は、合計を硬貨ごとの金額の和に分け、和の期待値・独立な確率変数の和の分散の性質を使う。2 つ目は、 そのものの確率分布を作って定義どおりに計算する。2 通りの結果が一致すれば、互いの確かめになる。
和の性質で
- 100 円硬貨の分の金額を 、10 円硬貨の分の金額を とすると、
- は、裏なら 0、表なら 100 を、それぞれ確率 でとる。期待値は
- の 2 乗の平均は なので、分散は
- は 0 か 10 を、それぞれ確率 でとる。期待値は
- の 2 乗の平均は なので、分散は
- 和の期待値は期待値の和なので、
- 2 枚の硬貨の表裏は互いに影響しないので、 と は独立。分散も足せて、
分布から直接
- 2 枚の表裏の出方は 4 通りで、どれも確率 。合計 は、両方裏で 0、10 円だけ表で 10、100 円だけ表で 100、両方表で 110。
- 期待値は「値 × 確率」の和。
- 値を 2 乗したものの平均は、
- 「2 乗の平均」から「平均の 2 乗」を引く。
- どちらの方法でも、期待値は 55、分散は 2525 で一致する。
問 4 さいころを 1 回投げ、偶数の目なら 、奇数の目なら とする。また、3 の倍数の目なら 、そうでなければ とする。 と は独立か。また、 を求めよ。
独立である。
方針 独立かどうかは、感覚ではなく定義で確かめる。 と の値のすべての組について、「同時に起こる確率」が「それぞれの確率の積」に等しいかを見る。そのために、6 つの目を と の値で分けて同時分布の表を作る。 は、 がとる値を直接調べる。
- になるのは偶数の 2、4、6 の目、 になるのは 3 の倍数の 3、6 の目。
- 6 つの目を と の値の組で分ける。1、5 の目は 、。3 の目は 、。2、4 の目は 、。6 の目は 、。
- 目の数を 6 で割って、同時分布の表にする(かっこの中はその目)。行の和が の確率分布、列の和が の確率分布になる。
| 計 | |||
|---|---|---|---|
| (1、5) | (3) | ||
| (2、4) | (6) | ||
| 計 | 1 |
- の列の 2 つのますを確かめる。行の計と列の計の積は で、表の値と等しい。
- の列の 2 つのますを確かめる。積は で、表の値と等しい。
- 4 つのます全部で が成り立つので、 と は独立である。
- は、 かつ のときだけ 1 で、ほかは 0。 になるのは 6 の目だけなので、
- 確かめ。独立なので が成り立つはず。、 で、 と一致する。
ここで間違えやすい 「同じ 1 回のさいころで決まるのだから独立ではない」と決めつけない。独立かどうかは確率の式で決まる。また、1 つのますだけ成り立っても独立とはいえない。全部のますを確かめる。
問 5 あるテストの得点 は、平均 60 点、標準偏差 12 点である。 とするとき、 の平均と標準偏差を求めよ。
平均 50、標準偏差 10
方針 は の 1 次式なので、 の形に整理して と を読み取り、期待値は 、標準偏差は で求める。 の分布の形は分からなくてよい。
- 分数を に掛ける形に書き直す。
- かっこを外す。 なので、
- つまり 、 の 1 次式である。
- 平均は、 の平均 60 を 倍して を足す。
- 標準偏差は、 の標準偏差 12 に の絶対値を掛ける。 は効かない。
標準化した (平均 0、標準偏差 1)を 10 倍して 50 を足したもので、いわゆる偏差値の形。