区間推定
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 数学B (2) 統計的な推測 ア (エ)「正規分布を用いた区間推定及び仮説検定の方法を理解すること」。
0. どういうまとまりか
分からない母平均 を、標本平均 を使って「この範囲にあるだろう」と幅をもたせて推定します。これが区間推定です。
が大きいとき は近似的に に従うので、 が から標準偏差の何倍以内にあるかが確率で言えます。それを の側に読みかえて区間を作ります。
| 推定するもの | 信頼度 95% の信頼区間 | 信頼度 99% |
|---|---|---|
| 母平均 | 1.96 を 2.58 にかえる | |
| 母比率 | 1.96 を 2.58 にかえる |
分かれ目は次の 3 つ。
- 1.96 は から、2.58 は から来る
- 「95% の確率で母平均を含む」の意味は、区間を何度も作ると、そのうち約 95% が母平均を含むということ。動くのは区間のほうで、母平均は決まった値
- 区間の幅は に比例する。幅を半分にするには を 4 倍にする。信頼度を上げると幅は広がる
1. 母平均の信頼区間
根拠: 学習指導要領 数学B-(2)-ア-(エ)
は近似的に標準正規分布 に従います。正規分布表から なので、
。不等式 を について解くと、信頼区間の式になります。
区間推定とは何か? また、そのとき求める区間を何というか?
母平均などの分からない値を、標本から求めた「この範囲に含まれるだろう」という区間で推定すること。その区間を信頼区間という
区間がその値を含むと期待できる度合い(95% など)を信頼度という。
母標準偏差が の母集団から大きさ の無作為標本をとり、標本平均が だった。 が大きいとき、母平均 に対する信頼度 95% の信頼区間は?
区間の端の記号では と書く。
信頼度 95% の信頼区間に出てくる 1.96 は、どこから来るか?
標準正規分布に従う で となる値
正規分布表で 。両側を合わせて 。
母平均の信頼度 99% の信頼区間では、1.96 のかわりにどの値を使うか?
2.58
なので 。信頼区間は 。
母標準偏差 10 の母集団から大きさ 100 の無作為標本をとったら、標本平均が 52.3 だった。母平均 に対する信頼度 95% の信頼区間は?
。、。
2. 「信頼度 95%」の意味
根拠: 学習指導要領 数学B-(2)-ア-(エ)
母平均 は分からないけれども決まった値です。標本を取り直すたびに変わるのは と、それから作る区間のほうです。
「母平均 に対する信頼度 95% の信頼区間」の正しい意味は?
標本をとって信頼区間を作ることを何度もくり返すと、作った区間のうち約 95% が母平均 を含む
標本ごとに区間が動く。 が動いて区間に入ったり出たりするのではない。
ある標本から という信頼度 95% の信頼区間が得られた。「 がこの区間に入る確率は 95%」と言ってよいか?
言えない。この区間は数値が決まっているので、 を含むか含まないかのどちらかに決まっている
95% は、区間を作る方法が母平均を当てる割合を表している。
3. 母標準偏差が分からないとき
根拠: 学習指導要領 数学B-(2)-ア-(エ)
実際の調査では、母標準偏差 も分からないことがほとんどです。
母標準偏差 が分からないとき、母平均の信頼区間はどう求めるか?
標本の大きさ が大きければ、 のかわりに標本の標準偏差 を使ってよい
信頼度 95% なら 。
4. 母比率の信頼区間
根拠: 学習指導要領 数学B-(2)-ア-(エ)
標本比率 は、 が大きいとき近似的に に従います。母平均と同じ考え方で区間を作り、分からない は標準偏差の中だけ でおきかえます。
大きさ の無作為標本の標本比率が のとき、 が大きければ、母比率 に対する信頼度 95% の信頼区間は?
標準偏差 の が分からないので、 で代用する。
400 人を無作為に選んで調べたら、80 人がある意見に賛成だった。賛成の母比率 に対する信頼度 95% の信頼区間は?
標本比率は 。、。、。
5. 信頼区間の幅
根拠: 学習指導要領 数学B-(2)-ア-(エ)
信頼度 95% の信頼区間の幅は です。幅が狭いほど推定が精密になります。
母平均の信頼区間の幅を半分にするには、標本の大きさ を何倍にすればよいか?
4 倍
幅は に比例する。 を 4 倍にすると が 2 倍になり、幅は半分になる。
同じ標本から、信頼度 95% と 99% の信頼区間を作る。幅が広いのはどちらか?
99% の信頼区間(1.96 が 2.58 になるので、幅は約 1.3 倍)
母平均を含む割合を上げるには、区間を広く取るしかない。信頼度と精密さは引きかえになる。
母標準偏差 の母集団で、母平均の信頼度 95% の信頼区間の幅を 以下にしたい。標本の大きさ の条件は?
、つまり
が大きいほど、また を小さく(精密に)したいほど、大きな標本が要る。
練習問題
問 1 母標準偏差 20 の母集団から大きさ 400 の無作為標本をとったところ、標本平均は 150 であった。母平均 に対する信頼度 95% の信頼区間を求めよ。
方針 標本の大きさ は大きいので、標本平均 は近似的に正規分布 に従うとみる。 を標準化した が、両側で 以上 以下に入る確率が約 95% なので、信頼区間は「標本平均 から を引いた値」から「足した値」までになる。まず を計算する。
- 標本平均の標準偏差は なので、
- これに 1.96 を掛けて、区間の半分の幅を出す。
- 下の端は、標本平均から引いて
- 上の端は、標本平均に足して
- よって、信頼度 95% の信頼区間は
ここで間違えやすい 1.96 に掛けるのは母標準偏差の 20 ではなく、標本平均の標準偏差 。 で割るのを忘れると、区間が 20 倍に広がってしまう。
問 2 母標準偏差 10 の母集団から大きさ 100 の無作為標本をとったところ、標本平均は 52.3 であった。母平均 に対する信頼度 99% の信頼区間を求めよ。ただし、 とする。
方針 標本の大きさ は大きいので、標本平均 は近似的に正規分布 に従うとみる。信頼度が 99% なので、 を標準化した が両側で入る範囲として、1.96 ではなく 2.58 を使う。あとは 95% のときと同じ手順で、標本平均から引いた値と足した値を求める。
- 標本平均の標準偏差は なので、
- 信頼度 99% なので 2.58 を掛けて、区間の半分の幅を出す。
- 下の端は、標本平均から引いて
- 上の端は、標本平均に足して
- よって、信頼度 99% の信頼区間は
ここで間違えやすい 信頼度が変わると、掛ける値が変わる。95% なら 1.96、99% なら 2.58。問題文の信頼度を先に確かめる。
信頼度 95% の区間()より広い。
問 3 ある高校の生徒 225 人を無作為に選んで 1 日の勉強時間を調べたところ、平均は 60 分、標準偏差は 15 分であった。この高校の生徒全体の 1 日の勉強時間の平均 に対する信頼度 95% の信頼区間を求めよ。
(単位は分)
方針 推定するのは生徒全体の平均(母平均)。標本の大きさ は大きいので、標本平均 は近似的に正規分布に従うとみて、両側で約 95% になる 1.96 を使う。母標準偏差は与えられていないが、 が大きいので、標本の標準偏差 15 で代用してよい。
- 母標準偏差 のかわりに、標本の標準偏差 15 を使う。
- 標本平均の標準偏差は、
- これに 1.96 を掛けて、区間の半分の幅を出す。
- 下の端は、標本平均から引いて
- 上の端は、標本平均に足して
- よって、信頼度 95% の信頼区間は (単位は分)
ここで間違えやすい 標準偏差の 15 分は、生徒 1 人ごとの勉強時間のばらつき。225 人の平均のばらつきは、それを で割った 1 分になる。15 にそのまま 1.96 を掛けない。
問 4 ある市で 900 人を無作為に選んで調べたところ、360 人がある施設を利用したことがあった。この市全体で施設を利用したことがある人の割合 に対する信頼度 95% の信頼区間を、小数第 3 位まで求めよ。
方針 推定するのは母比率 。標本の大きさ は大きいので、標本比率 は近似的に正規分布 に従うとみて、両側で約 95% になる 1.96 を使う。標準偏差の中の は分からないので、標本比率 で代用する。
- 標本比率を求める。
- 標準偏差の根号の中は、 を でおきかえた 。分子は
- 分母の 900 は なので、根号の外に出すと 30 になる。標準偏差は
- なので、標準偏差は
- これに 1.96 を掛けて、区間の半分の幅を出す。
- 下の端は、標本比率から引いて
- 上の端は、標本比率に足して
- よって、信頼度 95% の信頼区間は
ここで間違えやすい 途中の値を早く丸めすぎない。標準偏差を 0.02 と丸めてから 1.96 を掛けると、半分の幅が 0.039 になり、答えがずれる。小数第 3 位まで求めるので、途中は 1〜2 けた多くとっておく。
問 5 母標準偏差 10 の母集団で、母平均に対する信頼度 95% の信頼区間の幅を 2 以下にしたい。標本の大きさ を少なくともいくつにすればよいか。
385
方針 信頼度 95% の信頼区間は、標本平均から を引いた値から、足した値まで。だから幅は、両側を合わせてその 2 倍になる。この幅が 2 以下になるという条件を不等式にして、 について解く。
- 区間の半分の幅は 。 なので、 と書ける。
- 幅はその 2 倍で、これが 2 以下という条件は、
- 両辺を 2 で割ると、
- は正なので、両辺に掛けても不等号の向きは変わらない。
- 両辺とも正なので、2 乗しても不等号の向きは変わらない。 なので、
- は整数なので、384.16 以上で最も小さい整数は 385。少なくとも 385 にすればよい。
ここで間違えやすい 四捨五入して 384 としない。384 は 384.16 より小さく、条件を満たさない。「少なくとも」を問う問題では切り上げる。また、幅は区間の端から端までなので、半分の幅を 2 以下とするのではない。
【発展】標本が小さく、母標準偏差も分からないとき
が小さいと、標本の標準偏差 を のかわりに使った は標準正規分布からずれる(教科書の範囲外)。
母集団分布が正規分布なら、この量( の分母を にしたもの)は自由度 の t 分布に従い、1.96 のかわりに t 分布表の値を使う。
母集団分布が正規分布なら、この量( の分母を にしたもの)は自由度 の t 分布に従い、1.96 のかわりに t 分布表の値を使う。
t 分布は標準正規分布より裾が厚く、 が小さいほど 1.96 にあたる値が大きくなる(区間が広がる)。 が大きくなると標準正規分布に近づくので、教科書では「 が大きければ で代用」と扱う。