速度と道のり
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 数学Ⅲ (3) 積分法 ア (ウ)「定積分を利用して,いろいろな曲線で囲まれた図形の面積や立体の体積及び曲線の長さなどを求めること。」。このノートは、速度を積分して位置や道のりを求めることと、変化の割合が与えられた量を積分で求めることを扱います。
0. どういうまとまりか
位置を時刻で微分すると速度になるので、逆に速度を積分すれば位置の変化が分かります。
ただし「どれだけ位置が変わったか」と「実際にどれだけ動いたか(道のり)」は別のものです。行って戻れば位置の変化は 0 でも、道のりは 0 ではありません。
| 求めるもの(時刻 から まで) | 式 |
|---|---|
| 直線上の点の位置の変化 | |
| 直線上の点の道のり | |
| 平面上の点の道のり | |
| 量 の変化(変化の割合が ) |
分かれ目は次の 3 つ。
- 位置の変化は 、道のりは を積分する。速度の符号(動く向き)が変わる時刻で区間を分ける
- 位置は「はじめの位置」に位置の変化を足したもの。速度を積分しただけでは位置にならない
- 平面上の点の道のりの式は曲線の長さの式と同じ形。ただし同じところを何度も通れば、道のりは軌跡の長さより大きくなる
1. 直線上の点の位置と道のり
根拠: 学習指導要領 数学Ⅲ-(3)-ア-(ウ)
数直線上を動く点の座標 を時刻 の関数とみると、速度は 、加速度は です(位置を微分すると速度、速度を微分すると加速度)。積分はこの逆をたどります。
数直線上を速度 で動く点の、時刻 から までの位置の変化は?
のこと。正なら正の向きに、負なら負の向きに移っている。
数直線上を速度 で動く点の、時刻 での位置 は?(時刻 での位置を とする)
はじめの位置 を足し忘れない。速度だけでは、どこから動き始めたかが決まらない。
数直線上を速度 で動く点が、時刻 から までに動いた道のりは?
速さ の積分。向きに関係なく、実際に動いた距離の合計。
直線上の点の「位置の変化」と「道のり」は、どう違うか?
位置の変化は、行きと戻りが打ち消し合った正味の移動(負にもなる)。道のりは、行きも戻りも正の量として足した合計(負にならない)
速度の符号が変わらない(向きを変えない)あいだは、道のりは位置の変化の絶対値に等しい。
道のり を計算するとき、積分区間はどこで分けるか?
となって速度の符号が変わる時刻(点が向きを変える時刻)で分ける
の区間では を、 の区間では を積分して足す。
数直線上を速度 で動く点の、時刻 から までの位置の変化と道のりは?
位置の変化は 0、道のりは 2
で向きを変える。進んだ長さが 1、戻った長さが 1 で、もとの位置に戻っている。
数直線上を動く点の加速度 と、時刻 での速度 が分かっているとき、時刻 での速度 は?
加速度を積分すると速度の変化、速度を積分すると位置の変化。位置まで求めるには 2 回積分し、そのつどはじめの値を足す。
2. 平面上の点の道のり
根拠: 学習指導要領 数学Ⅲ-(3)-ア-(ウ)
平面上を動く点の座標を とすると、速度は を成分とするベクトルで、その大きさ が速さです(ベクトルの大きさは、成分の 2 乗の和の平方根)。
座標平面上を動く点 の座標が時刻 の関数のとき、時刻 から までに動いた道のりは?
速さを時刻で積分したもの。
平面上を動く点の道のりの式は、何の公式と同じ形か?
媒介変数で表された曲線の長さの公式と同じ形(時刻 が媒介変数にあたる)
点が同じところを 2 度通らなければ、道のりは点がえがく曲線の長さに等しい。
平面上を動く点の道のりが、点のえがく図形(軌跡)の長さより大きくなるのはどんなときか?
点が同じところを何度も通るとき(円を何周もする、線分の上を往復する、など)
道のりは通った回数だけ重ねて数える。半径 の円を 2 周すれば、道のりは 。
3. 変化の割合から量を求める
根拠: 学習指導要領 数学Ⅲ-(3)-ア-(ウ)
速度と位置の関係は、どんな量にも当てはまります。水の量、温度、人口など、変化の割合(時刻で微分したもの)が分かっていれば、積分して量そのものが求められます。
時刻 での水の量を とする。水の量の変化の割合 が分かっているとき、時刻 での水の量は?
「毎秒 の割合で注ぐ」は のこと。はじめの量 を足す(空なら 0)。
水が毎秒 ()の割合で容器から抜けていくとき、時刻 での水の量 は?
減っていくので 。空になる時刻は を解いて求める。
【発展】微分方程式(範囲外の扱い)
未知の関数とその導関数を含む等式を微分方程式といい、それを満たす関数を求めることを「微分方程式を解く」という。現行の学習指導要領には無く、教科書は発展として載せている。
例: を定数として、 を解く。
- 定数関数 は、両辺が 0 になるので解である
- のとき、両辺を でわって (左辺に 、右辺に だけを集める。これを変数分離という)
- 両辺を で積分する。左辺は置換積分で になるので、
- ( は積分定数)
- なので、
- とおくと ()。 とすれば手順 1 の も含まれる
よって解は ( は任意の定数)。実際、 を微分すると になる。
「変化の割合が、そのときの量に比例する」現象(放射性物質が減る、冷めていく物体の温度差が縮む、など)は、この形の式で表される。
練習問題
問 1 数直線上を動く点 P の、時刻 での速度が である。 から までの、P の位置の変化と道のりを求めよ。
位置の変化は 5、道のりは 13
方針 位置の変化は をそのまま積分する。道のりは の積分なので、 となる時刻で区間を分け、 の区間では符号を反転して積分する。
- 位置の変化は
- となるのは から 。 で 、 で
- 正の向きに進んだ長さは
- 負の向きに戻った長さは 。 での値は 、 での値は なので、
- 道のりは
確かめ: 9 進んで 4 戻ったので、位置の変化は 。手順 1 と合う。
問 2 数直線上を動く点 P は、時刻 に原点にあり、時刻 での速度が である。時刻 での P の座標と、 から までに P が動いた道のりを求めよ。
座標は 、道のりは 1
方針 座標は、はじめの位置(原点なので 0)に の定積分を足す。道のりは、 となる時刻 で区間を分けて を積分する。、 を使って整理する。
- 座標は
- での値は 、 での値は
- よって座標は
- となるのは から 。 で 、 で
- 負の向きに動いた長さは 。 での値は 、 での値は なので、
- 正の向きに動いた長さは 。 での値は 、 での値は なので、
- 道のりは
確かめ: 負の向きに 、正の向きに 動いたので、座標は 。手順 3 と合う。
問 3 空の水そうに、注ぎ始めてから 分後の注ぐ速さが毎分 L になるように水を入れる。3 分後の水の量を求めよ。また、水の量が 104 L になるのは何分後か。
3 分後は 28 L、104 L になるのは 8 分後
方針 注ぐ速さは水の量 の変化の割合 なので、これを 0 から まで積分すれば 分後の水の量になる。はじめは空なので 。
- 分後の水の量は
- の不定積分は なので、
- のとき、 なので (L)
- とおくと、 から
- なので、
- よって (分後)
問 4 座標平面上を動く点 P の時刻 での座標が 、 である。 から までに P が動いた道のりを求めよ。
方針 道のりは速さ の積分。速さが一定になるので、積分は「速さ 時間」になる。
- 、
- 2 乗の和は
- 速さは で一定
- 道のりは
ここで間違えやすい P がえがく図形は半径 3 の円で、周の長さは 。これを答えにしない。 が 0 から まで動くので、P は円を 2 周していて、道のりは円周の 2 倍になる。
問 5 座標平面上を動く点 P の時刻 での座標が 、 である。 から までに P が動いた道のりを求めよ。
方針 と を積の微分で求めると、項が打ち消し合って簡単になる。速さを作り、根号を外すときに の符号を確かめてから積分する。
- なので、
- なので、
- 2 乗の和は
- 速さは 。 では なので、
- 道のりは
- なので、道のりは
問 6 数直線上を動く点 P の、時刻 での加速度が である。 のとき、P は原点にあり、速度は 2 である。時刻 での P の速度 と座標 を求めよ。また、 から までに P が動いた道のりを求めよ。
、、道のりは 4
方針 加速度を積分して速度、速度を積分して位置を求める。積分するたびに、 での値(速度 2、座標 0)を足す。道のりは の積分なので、 となる時刻で区間を分ける。
- 速度は
- なので、
- 座標は
- で となるのは、 から
- では 。動いた長さは の変化で、
- では 。 は から まで減るので、動いた長さは 2
- では 。 は から まで増えるので、動いた長さは 1
- 道のりは