三次の乗法公式と二項定理
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 数学Ⅱ (1) いろいろな式 ア (ア)「三次の乗法公式及び因数分解の公式を理解し,それらを用いて式の展開や因数分解をすること。」。
0. どういうまとまりか
数学Ⅰの二次の乗法公式を三次に広げたのが三次の乗法公式です。展開の公式を逆に読めば、そのまま因数分解の公式になります。
さらに を一般の で展開する式が二項定理で、各項の係数は組合せの数 になります。
| 形 | 展開・因数分解の結果 | 符号の見方 |
|---|---|---|
| 係数は 1, 3, 3, 1 | ||
| の奇数乗の項がマイナス | ||
| 2 つ目の因数の真ん中がマイナス | ||
| 2 つ目の因数の真ん中がプラス | ||
| 一般項は |
分かれ目は次の 3 つ。
- の 2 つ目の因数は 。 のような はつかず、符号も逆になる
- 係数を求めるときは、一般項の ・ に符号や係数ごと入れる。 なら 、
- と が混ざる式は、一般項の の指数を の式で書いて、求める次数になる を決める
1. 三次の乗法公式と因数分解
根拠: 学習指導要領 数学Ⅱ-(1)-ア-(ア)
にもう一度 を掛けると、三次の展開公式が出ます。これを逆に使うと因数分解の公式になります。
三次の乗法公式で、 と の展開は?
、
係数は 1, 3, 3, 1。 は を に置きかえたもので、 の奇数乗の項がマイナスになる。
と を展開すると?
、
途中の項 、 が打ち消し合って、2 項だけが残る。
と の因数分解の公式は? 符号はどう覚えるか?
、
1 つ目の因数の符号はもとの式と同じ、2 つ目の因数の真ん中はその逆、最後の はいつもプラス。
と を因数分解すると?
、
、 と見て、 の公式に当てはめる。
を展開すると?
で 、。 のように、 を ごと 2 乗する。
2. 二項定理とパスカルの三角形
根拠: 学習指導要領 数学Ⅱ-(1)-ア-(ア)
を展開したとき、 の項は 個の のうち 個から を選ぶ選び方の数だけ出てきます。だから係数は です。
二項定理とは?
係数 を二項係数という。 個の因数 から を 個選ぶ選び方の数。
の展開式の一般項は?
()
と の指数の和はいつも 。特定の項の係数は、この一般項から求める。
パスカルの三角形とは? どんな規則で並んでいるか?
の二項係数を の順に三角形に並べたもの。各行の両端は 1 で、隣り合う 2 数の和がその間の下の数になる
の行は 1, 4, 6, 4, 1、 の行は 1, 5, 10, 10, 5, 1。規則は を表している。左右対称なのは だから。
3. 係数を求める
根拠: 学習指導要領 数学Ⅱ-(1)-ア-(ア)
全部を展開しなくても、一般項に当てはめれば特定の項の係数だけが求まります。
の展開式で、 の係数は?
40
一般項は 。 から で、。
の展開式の定数項は?
一般項は 。 から で、。
二項定理を使って、 の値を求めると?
に を代入する。 を代入すれば、符号を交互にした和が 0 になる()。
【発展・数学Ⅱの範囲外】 の展開式で、()の係数は?
個の因数から を 個、 を 個、 を 個選ぶ並べ方の数(同じものを含む順列)。教科書では発展として触れる程度なので、復習には出さずにここに置いている。 と 2 つに分けて二項定理を 2 回使っても求まる。
練習問題
問 1 次の式を展開せよ。(1) (2)
(1) (2)
方針 どちらも 3 乗の形なので、三次の乗法公式 に当てはめる。公式の 、 が何にあたるかを先に決め、 のような係数つきの文字はかたまりのまま入れる。
- (1) は公式の が 、 が 3 にあたる。
- 各項を計算する。、、 なので、
- (2) は公式の が 、 が にあたる。
- かっこの累乗を先に計算する。、
- 係数を掛ける。、 なので、
ここで間違えやすい を としてしまうこと。係数の 2 も 2 乗して にしてから 3 倍する。
問 2 次の式を因数分解せよ。(1) (2)
(1) (2)
方針 、 のように「何かの 3 乗」と見られれば、 の公式が使える。(2) は 6 乗なので 2 乗の差とも 3 乗の差とも見られるが、先に 2 乗の差 で分けるほうが最後まで分解しやすい。
- (1) 、 なので、
- の に 、 に 3 を入れる。
- かっこの中を計算して、
- (2) 、 なので、
- 前の因数は の公式で、
- 後ろの因数は の公式で、
- 2 つを掛け合わせて、
ここで間違えやすい (2) で先に と見ると となり、後ろの因数がさらに と分解できることに気づきにくい。
問 3 の展開式で、 の係数を求めよ。
方針 全部を展開しなくても、二項定理の一般項 を使えば の項だけを取り出せる。 に 、 に を符号・係数ごと入れ、 の指数が 2 になる を決める。
- 一般項を書く。
- なので、 の指数は
- の項になるのは のときなので、
- を一般項に入れると、係数は
- 、、 なので、
ここで間違えやすい を 2 として符号を落とすこと、 の 3 を 2 乗し忘れること。
問 4 の展開式で、 の係数と定数項を求めよ。
の係数は 20、定数項は 15
方針 と が混ざるので、一般項の の指数を の式で表す。その指数が 3 になる と、0 になる (定数項)をそれぞれ求めて、係数 を計算する。
- 一般項は
- で、 を掛けると の指数が だけ下がる。 の指数は なので、一般項は
- の項は のとき。 から
- その係数は
- 定数項は の指数が 0 のとき。 から
- その係数は
ここで間違えやすい 定数項は「 を含まない項」、つまり の指数が 0 の項。 の項ではない。
問 5 と、 の値を求めよ。
64 と 0
方針 二項係数の和は、1 つずつ計算しなくても、 の展開式の に数を代入すると一度に求まる。全部プラスの和なら 、符号が交互の和なら を入れる。
- 二項定理から、
- を代入すると、右辺は になる。左辺は
- を代入すると、 の奇数乗の項だけがマイナスになり、右辺は になる。左辺は
- 確かめ: パスカルの三角形の の行は 1, 6, 15, 20, 15, 6, 1。全部足すと 、交互に足し引きすると