仮説検定の考え方
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 数学Ⅰ (4) データの分析 ア (ウ)「具体的な事象において仮説検定の考え方を理解すること」。
0. どういうまとまりか
「このコインは表が出やすい」「新しい商品のほうが好まれている」といった主張を、データを根拠にして判断する方法を学びます。
考え方の流れは次のとおりです。
| 段階 | すること |
|---|---|
| ① 仮説を立てる | 主張と反対の「たまたまそうなっただけ」という仮説を立てる(例:コインは公正で、表と裏が同じ確率で出る) |
| ② 確率を調べる | その仮説が正しいとして、観測された結果(またはそれより極端な結果)が起こる確率を、実験やシミュレーションで調べる |
| ③ 基準と比べる | 確率が基準(5% など)以下なら「めったに起こらないことが起きた」として仮説を否定し、主張が正しいと判断する |
分かれ目は次の 3 つ。
- 確かめる仮説は、主張したいことの反対(「たまたま」の側)
- 確率は「ちょうどその結果」ではなく「その結果以上に極端な結果」を合計する
- 仮説を否定できなかったときは「仮説が正しい」ではなく「主張が正しいとは言えない」
1. 仮説検定とは
根拠: 学習指導要領 数学Ⅰ-(4)-ア-(ウ)
コインを 10 回投げて表が 9 回出たとき、このコインは表が出やすいと言ってよいでしょうか。
公正なコインでも、たまたま 9 回出ることはあり得ます。そこで「コインは公正だ」という仮説のもとで、
表が 9 回以上出ることがどれくらい起こりにくいかを調べ、それで判断します。このような方法を仮説検定といいます。
仮説検定とはどんな方法か?
ある仮説が正しいとしたとき、観測された結果がどれくらい起こりにくいか(確率)を調べ、その仮説が正しいかを判断する方法
確率が小さければ、その仮説は正しくなかったと考える。
「このコインは表が出やすい」と主張したいとき、仮説検定で正しいと仮定して確率を調べる仮説は何か?
「このコインは公正である(表と裏が同じ確率で出る)」
主張したいことの反対の仮説を立て、それが否定できるかを見る。
仮説検定で、「起こりにくい」かどうかを判断する基準の確率として、よく使われる値は?
5%(0.05)。より厳しく判断するときは 1%(0.01)
基準は判断する前に決めておく。結果を見てから都合よく変えない。
仮説のもとで調べた確率が基準以下だったとき、どう判断するか?
仮説は正しくなかった(否定される)と判断し、主張が正しいと考える
「仮説が正しいなら、めったに起こらないことが起きた」と考えるより、仮説のほうが誤っていたと考えるほうが自然だから。
2. 実験やシミュレーションで確率を見積もる
根拠: 学習指導要領 数学Ⅰ-(4)-ア-(ウ)
仮説のもとでの確率は、公正なコインを実際に何度も投げたり、コンピュータで乱数を使って投げるまねをしたりして
(シミュレーション)、結果の相対度数から見積もります。
次の表は、公正なコインを 10 回投げることを 1000 セットくり返した実験の結果の一例です。
| 表の回数 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 度数 | 2 | 9 | 45 | 118 | 203 | 248 | 207 | 114 | 43 | 10 | 1 |
表が 9 回以上出たのは セットで、相対度数は 。約 1.1% です。
仮説のもとでの確率を、実験やシミュレーションで見積もるにはどうするか?
仮説どおりの状況で何度もくり返し、その結果が起こった相対度数を確率とみなす
くり返す回数が多いほど、相対度数は確率に近づく。
コインを 10 回投げて表が 9 回出たとき、仮説検定で調べる確率は「ちょうど 9 回」の確率か?
「9 回以上」(9 回または 10 回)の確率
観測された結果と、それより極端な結果をまとめて「このくらい偏ることが起こる確率」とする。
3. 判断の言い方
根拠: 学習指導要領 数学Ⅰ-(4)-ア-(ウ)
確率が基準より大きいときは、「たまたま起きた」と考えても不自然ではありません。
このとき仮説は否定できませんが、仮説が正しいと証明されたわけでもありません。言い方を区別します。
仮説のもとでの確率が基準より大きかったとき、どう判断するか?
仮説は否定できない。主張が正しいとは言えない
仮説が正しいと示されたわけではない。判断を保留する、と考える。
「主張が正しいとは言えない」と「主張は誤りだと言える」は同じ意味か?
同じではない
前者は「データからは判断できない」ということ。データを増やせば、正しいと判断できるようになることもある。
仮説検定で「仮説は正しくない」と判断したとき、その判断が誤っている可能性はあるか?
ある
仮説が正しくても、基準以下の確率のことはたまたま起こる。基準 5% なら、仮説が正しいのに否定してしまう確率が最大で 5% ある。
同じデータでも、判断の基準を 5% から 1% に変えると結論が変わることはあるか?
ある
確率が 1% より大きく 5% 以下なら、5% の基準では仮説を否定でき、1% の基準では否定できない。
練習問題
問 1 あるコインを 10 回投げたら表が 9 回出た。2 の節の実験結果を使い、基準を 5% として「このコインは表が出やすい」と判断できるか答えよ。
判断できる
方針 主張「表が出やすい」の反対の仮説「コインは公正である」を立てる。その仮説のもとで「表が 9 回以上出る」ことがどれくらい起こるかを、実験結果の相対度数で見積もり、基準の 5% と比べる。
- 仮説は「コインは公正である(表と裏が同じ確率で出る)」。
- 2 の節の表から、表が 9 回以上(9 回または 10 回)出たのは セット。
- 相対度数は で、約 1.1%
- 1.1% は基準の 5% 以下なので、「公正なコインでは、めったに起こらないことが起きた」ことになり、仮説は否定される。
- よって、このコインは表が出やすいと判断できる。
ここで間違えやすい 数えるのは「ちょうど 9 回」の 10 セットではなく、「9 回以上」の 11 セット。
問 2 別のコインを 10 回投げたら表が 8 回出た。同じ実験結果を使い、基準を 5% として判断せよ。
表が出やすいとは言えない
方針 問 1 と同じく、仮説「コインは公正である」のもとで、今度は「表が 8 回以上出る」相対度数を表から求め、基準の 5% と比べる。
- 仮説は「コインは公正である」。
- 表から、表が 8 回以上(8 回・9 回・10 回)出たのは セット。
- 相対度数は で、約 5.4%
- 5.4% は基準の 5% より大きいので、「公正なコインでもたまたま起こりうる」と考えられ、仮説は否定できない。
- よって、表が出やすいとは言えない。
ここで間違えやすい 「公正なコインだ」と言えたわけではない。仮説を否定できなかっただけで、判断は保留になる。
問 3 問 1 で、基準を 1% にしていたら判断はどうなるか。
表が出やすいとは言えない
方針 データも仮説も問 1 と同じなので、仮説のもとでの相対度数(約 1.1%)は変わらない。変わるのは比べる相手の基準だけなので、1.1% と 1% の大小を比べ直す。
- 問 1 から、公正なコインで表が 9 回以上出る相対度数は で、約 1.1%
- 基準の 1% は 。 なので、相対度数は基準より大きい。
- 基準以下ではないので、仮説「コインは公正である」は否定できない。
- よって、表が出やすいとは言えない。
基準を厳しくすると、同じデータでも結論が変わる例。だから基準は、結果を見る前に決めておく。
問 4 新しい飲み物 A と今までの飲み物 B を 20 人に飲み比べてもらったところ、15 人が A のほうがおいしいと答えた。
「どちらを選ぶかは五分五分」という仮説のもとで、公正なコインを 20 回投げることを 1000 セットくり返すと、表が 15 回以上出たのは 21 セットだった。
基準を 5% として、「A のほうがおいしいと感じる人が多い」と判断できるか。
「どちらを選ぶかは五分五分」という仮説のもとで、公正なコインを 20 回投げることを 1000 セットくり返すと、表が 15 回以上出たのは 21 セットだった。
基準を 5% として、「A のほうがおいしいと感じる人が多い」と判断できるか。
判断できる
方針 主張「A のほうがおいしいと感じる人が多い」の反対の仮説は「どちらを選ぶかは五分五分」。五分五分なら、1 人が A を選ぶことは公正なコインで表が出ることと同じなので、「20 人中 15 人以上が A」を「20 回中 15 回以上が表」に置きかえて、その相対度数を基準と比べる。
- 仮説は「どちらを選ぶかは五分五分」。
- この仮説のもとで、20 人中 15 人以上が A を選ぶ確率を、コインの実験の相対度数で見積もる。表が 15 回以上出たのは 1000 セット中 21 セットなので、 で、約 2.1%
- 2.1% は基準の 5% 以下なので、「五分五分なら、めったに起こらないことが起きた」ことになり、仮説は否定される。
- よって、A のほうがおいしいと感じる人が多いと判断できる。