地誌の考察方法
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領「地理探究」B (2) ア (イ) の「地域の結び付き,構造や変容などを地誌的に考察する方法などについて理解すること」。
内容の取扱いは、項目ごとに整理して考察する地誌、特色ある事象と他の事象を有機的に関連付けて考察する地誌、対照的又は類似的な性格の二つの地域を比較して考察する地誌の 3 つの方法を用いるよう求めています。
このノートは、3 つの地誌の方法の違いと、地域を見るときの 3 つの視点(結び付き・構造・変容)を扱います。
0. 何を押さえるか
| 方法 | やり方 | 長所 | 気を付けること |
|---|---|---|---|
| 静態地誌 | 自然・産業・人口・文化などの項目を順に整理する | 地域の全体を漏れなく押さえられる | 項目どうしのつながりが見えにくい |
| 動態地誌 | 特色ある事象を軸に、ほかの事象を関連付ける | 地域の特色がなぜ生まれたかが見える | 軸に関わらない事象が抜け落ちやすい |
| 比較地誌 | 対照的または類似的な 2 つの地域を比べる | 違い・共通点とその要因が浮かび上がる | 同じ項目・同じ指標で比べないと比較にならない |
地誌は、ある地域のさまざまな事象を総合的に捉えて、その地域の特色を明らかにするものです。これに対し、気候・農業・工業などの事象ごとに世界を見るのが系統地理です。
取り違えやすい分かれ目は次の 3 つ。
- 静態地誌は「並べる」、動態地誌は「つなげる」。項目の順番ではなく、事象どうしを関連付けているかどうかで分かれる
- 比較地誌は対照的な地域だけでなく、似た地域どうしも比べる。似た地域を比べると、違いを生む要因が見えやすい
- 地理探究の地誌は州単位に限らない。国・国の中の地方・複数の国のまとまりなど、様々な規模の地域を取り上げる
1. 地誌と系統地理
根拠: 学習指導要領 地理探究-B-(2)-ア-(イ)
地誌を考察するときは、系統地理で学んだ仕組み(気候区分・農業の型・工業立地など)が、地域の特色を説明する道具になります。
ある地域の自然・産業・人口・文化などを総合的に捉えて、その地域の特色を明らかにする地理の分野を何という?
地誌
気候・農業・工業などの事象ごとに世界全体を見る系統地理と対になる。
地誌の考察で、系統地理の知識はどのように役立つか?
地域の特色がなぜ生まれたかを説明する手がかりになる
たとえば「この地域で稲作がさかん」という事実を、モンスーンによる多雨という気候の仕組みで説明できる。
地理探究の地誌で取り上げる地域の規模は、州単位に限られるか?
限られない(様々な規模の地域を取り上げる)
中学校の「世界の諸地域」は主に州を単位としたが、地理探究では地域区分を踏まえ、国や国の中の地方なども取り上げる。
2. 静態地誌と動態地誌
根拠: 学習指導要領 地理探究-B-(2)-ア-(イ)
地域の多様な事象を項目ごとに整理する方法と、特色ある事象を中心に関連付ける方法とでは、見えてくるものが違います。
地形・気候・農業・工業・人口・文化などの項目を順に取り上げて、地域を整理して考察する地誌を何という?
静態地誌
地域の全体を漏れなく押さえられる。多くの場合、位置や自然環境から始めて、産業・人口・文化へと進む。
静態地誌の弱点とされるのは何か?
項目の羅列になり、事象どうしのつながりが見えにくいこと
「気候」「農業」の項目が別々に並ぶだけでは、なぜその農業が成り立つのかが読み取りにくい。
地域の特色ある事象を中心に据え、ほかの事象と有機的に関連付けて考察する地誌を何という?
動態地誌
たとえば東南アジアを「モンスーン」を軸に見て、稲作・人口の集まり方・食文化を結び付けていく。
動態地誌で気を付けることは何か?
中心に据えた事象と関わりの薄い事象が抜け落ちやすいこと
地域の全体像を押さえるには、静態地誌と組み合わせるとよい。
3. 比較地誌
根拠: 学習指導要領 地理探究-B-(2)-ア-(イ)
2 つの地域を並べて見ると、1 つの地域だけを見ていては気付かない特色が見えてきます。
対照的または類似的な性格をもつ 2 つの地域を比べて考察する地誌を何という?
比較地誌
違いと共通点を整理することで、それぞれの地域の特色がはっきりする。
比較地誌で、似た性格の 2 つの地域をあえて比べると、何が見えやすくなるか?
わずかな違いと、その違いを生んだ要因
条件の多くが共通しているので、異なる点に注目しやすい。
比較地誌で 2 つの地域を比べるとき、そろえておくべきことは何か?
比べる項目や指標(と時点)
一方は人口密度、もう一方は人口の総数、というように指標がずれていると比較にならない。
4. 結び付き・構造・変容
根拠: 学習指導要領 地理探究-B-(2)-ア-(イ)
地誌的に考察するときは、地域の結び付き、構造や変容に着目します。
この 3 つの視点は、どの方法の地誌でも使えます。
貿易・人の移動・投資・情報のやりとりなどを通じて、ある地域がほかの地域とどうつながっているかに着目する視点を何という?
地域の結び付き
たとえば東南アジアの工業化は、日本など外国からの企業進出という結び付きなしには説明できない。
地域の中で、自然・産業・人口などの事象が互いにどう関わり合って成り立っているかに着目する視点を何という?
(地域の)構造
たとえば「乾燥した気候 → 灌漑に頼る農業 → 水の得られる所に人口が集まる」という関わり合い。
工業化や都市化などによって、地域の姿が時間とともにどう変わってきたかに着目する視点を何という?
(地域の)変容
いまの地域の特色が、どのような過程を経て生まれたのかを考える。