大気の安定と不安定
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
根拠は高等学校学習指導要領(平成30年告示)「地学」の内容 (3) ア (ア) ㋑「大気の運動と気象」。
内容の取扱いは「『対流』による現象については、大気の安定と不安定にも触れること」を
求めている。
0. どういう論点か
大気の安定と不安定は、3 つの「100 m あたりの気温変化」を比べるだけで決まります。
数値を覚えるのではなく、大小関係を覚えます。
| 値 | 何の変化か | |
|---|---|---|
| 乾燥断熱減率 | 1.0 ℃/100 m | 雲ができていない空気塊が上昇するとき |
| 湿潤断熱減率 | 約 0.5 ℃/100 m | 雲ができながら上昇するとき |
| 気温減率(実際の大気) | 平均 0.65 ℃/100 m(その時々で違う) | まわりの大気の高さごとの気温 |
判定: 気温減率が乾燥断熱減率より大きければ不安定、小さければ安定。
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 湿潤断熱減率のほうが小さい(凝結熱が出るぶん、冷え方がゆるい)
- 不安定=上昇が勝手に続く(雲が縦に発達して積乱雲になる)
- 逆転層(上が高温)は極端に安定(煙や汚染物質がたまる)
1. 断熱変化
根拠: 学習指導要領 地学-(3)-ア-(ア)-㋑
断熱変化とは?
外との熱の出入りなしに、膨張・圧縮だけで温度が変わる変化
空気塊の上昇・下降がこれにあたる。
乾燥断熱減率の値は?
100 m につき 1.0 ℃(1 km につき約 10 ℃)
雲ができていない空気塊が上昇するときの冷え方。
湿潤断熱減率の値は?なぜ乾燥断熱減率より小さい?
100 m につき約 0.5 ℃。凝結によって潜熱が放出され、冷え方がゆるくなるから
雲の中の空気塊はゆっくり冷える。
持ち上げ凝結高度とは?
上昇する空気塊が露点に達し、雲ができ始める高さ
これより上では湿潤断熱減率で冷える。
気温 20 ℃・露点 10 ℃ の空気塊が上昇すると、雲は何 m 付近からできる?
約 1000 m
気温は 1 ℃/100 m、露点は約 0.2 ℃/100 m で下がるため、差 10 ℃ が約 1000 m で埋まる。
2. 安定・不安定の判定
根拠: 学習指導要領 地学-(3)-ア-(ア)-㋑
大気が不安定なのは、気温減率と乾燥断熱減率がどんな関係のとき?
気温減率が乾燥断熱減率より大きいとき(上のほうが急に冷たい)
持ち上げられた空気塊がまわりより暖かくなり、さらに上昇する。
大気が安定なのはどんなとき?そのとき空気塊はどうなる?
気温減率が断熱減率より小さいとき。持ち上げても冷えて重くなり、もとの高さへ戻る
対流が起こらない。
条件付き不安定とは?
乾燥断熱減率より小さく、湿潤断熱減率より大きい気温減率のとき(雲ができれば不安定になる)
きっかけがあれば積乱雲に発達する。
地表が強く暖められると大気はどうなる?
下が暖かくなって気温減率が大きくなり、不安定になる
夏の午後の雷雨がこれ。
逆転層とは?どんな状態?
高さとともに気温が上がっている層。極端に安定
対流が起こらず、下に汚染物質やスモッグがたまる。
放射冷却の強い晴れた夜に、地表付近で起こることは?
地面が冷えて接地逆転層ができる(霧や霜ができやすい)
朝に解消する。
3. 不安定がつくる現象
根拠: 学習指導要領 地学-(3)-ア-(ア)-㋑
積乱雲はどんなときに発達する?
大気が不安定で、水蒸気が豊富に供給されるとき
上昇が止まらず、圏界面近くまで達する。
積乱雲がもたらす現象を 4 つ挙げると?
激しい雨(集中豪雨)、雷、突風(ダウンバースト)、ひょう、竜巻
短時間に狭い範囲で起こる。
積乱雲の上端が平らに広がる(かなとこ雲)のはなぜ?
圏界面より上は安定で、それ以上は上昇できないから
横に広がるしかなくなる。
フェーン現象とは?なぜ気温が上がる?
風が山を越えたあと、高温で乾燥した風になる現象。風上側で雲をつくって潜熱を得たため
上りは湿潤断熱減率(0.5 ℃/100 m)、下りは乾燥断熱減率(1 ℃/100 m)で温まる。
1000 m の山を越える風が、風上の中腹から雲をつくると、風下の同じ高度で気温はどうなる?
高くなる
上りより下りのほうが 100 m あたりの温度変化が大きいため。
海陸風はどうやって起こる?
昼は陸が暖まって上昇気流が生じ、海から風が吹く(海風)。夜は逆(陸風)
比熱と暖まりやすさの違いによる局地的な対流。
ヒートアイランド現象が起こるのはなぜ?
舗装・建物が熱をためやすく、緑地が少なく蒸発による冷却が働かないから
都市の中心が周囲より高温になる。