地震波と走時曲線
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
根拠は高等学校学習指導要領(平成30年告示)「地学」の内容 (1) ア (イ) ㋐「地球の内部構造」。
内容の取扱いは「走時曲線を扱い,地震波トモグラフィーにも触れること」を求めている。
0. どういう論点か
地球内部の層構造は、地震波の到達時刻という 1 種類の観測から組み立てられました。
どの観測がどの結論を出したかを対にして覚えます。
| 観測 | 結論 |
|---|---|
| 走時曲線が途中で折れ曲がる | 下に速い層がある → モホ面(地殻の厚さ) |
| 103°〜143° に P 波が届かない帯がある | 核があり、そこで波が曲げられている |
| S 波が 103° より遠くへ届かない | 外核が液体 |
| 143° より遠くに弱い P 波が届く | 内核が固体 |
| 速さが標準より速い/遅いずれ | 内部の温度分布(地震波トモグラフィー) |
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 走時曲線の傾きの逆数が速度(傾きそのものではない)
- 折れ曲がり点より近い観測点では直接波が先、遠い観測点では屈折波が先に着く
- 地震波の速さは、硬い(剛性が大きい)ほど速く、温度が高いほど遅い
1. 走時曲線の読み方
根拠: 学習指導要領 地学-(1)-ア-(イ)-㋐
走時は地震波が観測点に届くまでにかかった時間、走時曲線は震央距離に対して
走時をとったグラフです。
走時曲線とは、何を何に対してとったグラフ?
震央距離(横軸)に対する走時=波の到達までの時間(縦軸)
観測点を並べると 1 本の曲線になる。
走時曲線の傾きから何が分かる?
傾きの逆数が、その波の見かけの速度
傾きが小さい(寝ている)ほど速い波。
浅い地震の走時曲線は、震央距離が 200 km 付近で折れ曲がる。何を示す?
地殻の下に、地震波がより速く伝わる層(マントル)があること
深い層を通った波が、途中から先に到達するようになる。
折れ曲がり点より近い観測点・遠い観測点では、それぞれどちらの波が先に届く?
近い観測点は直接波(地殻の中を直進した波)、遠い観測点は屈折波(マントルを通った波)
遠回りでも速い層を通ったほうが早く着く。
走時曲線の折れ曲がる距離が分かると、何が計算できる?
地殻の厚さ(モホ面の深さ)
上下の層の速度と折れ曲がり点の距離から求められる。
モホ面(モホロビチッチ不連続面)は、どのように発見された?
1909 年、走時曲線が折れ曲がることをモホロビチッチが見いだした
地殻とマントルの境界。
初期微動継続時間から震源距離を出す式(大森公式)は?
震源距離 = k × 初期微動継続時間(k は約 6〜8 km/s)
P 波と S 波の速度差から出てくる関係。
2. 地球規模の走時が示す核
根拠: 学習指導要領 地学-(1)-ア-(イ)-㋐
震央距離 103°〜143° に地震波(P 波)がほとんど届かない帯を何という?
シャドーゾーン(暗帯)
核で波が屈折・反射するためにできる。
シャドーゾーンの広がりから何が求められた?
核の大きさ(深さ約 2900 km から核が始まること)
グーテンベルクが求めたので、この境界をグーテンベルク不連続面という。
S 波は震央距離 103° より遠くへ届かない。何を示す?
外核が液体であること
S 波(横波)は液体を伝わらない。
143° より遠くに、弱い P 波が届くことは何を示す?
核の内側にさらに硬い層(内核)があり、そこで波が曲げられていること
レーマンが 1936 年に見いだし、内核の存在が分かった。
マントル内で地震波の速度がいったん遅くなる深さ 100〜200 km の層を何という?
低速度層(アセノスフェアにあたる)
融点に近く、やわらかいため波が遅くなる。
3. 地震波トモグラフィー
根拠: 学習指導要領 地学-(1)-ア-(イ)-㋐
地震波トモグラフィーは、多数の地震と観測点の走時のずれを組み合わせて、
内部の速度分布を 3 次元の像として描く方法です。医療の CT と同じ考え方です。
地震波トモグラフィーとは、どんな方法?
多数の地震波の走時のずれを解析し、地球内部の速度分布を 3 次元で描く方法
平均的な層構造からの「ずれ」を見るのがポイント。
地震波の速度が標準より速い領域・遅い領域は、それぞれどんな状態と考えられる?
速い領域は低温(硬い)、遅い領域は高温(やわらかい)
温度が高いと岩石の剛性が下がるため。
トモグラフィーによって見えるようになった構造を 2 つ挙げると?
沈み込んだ冷たいプレート(速い領域)と、上昇する高温のプルーム(遅い領域)
マントル全体の対流の姿が描けるようになった。
トモグラフィーは、地震波の「走時」を平均的な地球モデルと比べる。なぜ差を見る?
差(残差)のほうが、局所的な温度や組成の違いを敏感に表すから
絶対値では平均構造に埋もれてしまう。