「を・に・が」と「て」の識別
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
0. どういうまとまりか
「を・に・が」は、格助詞にも接続助詞にもなります。接続助詞なら、そこで文の前半と後半が切れ、主語が変わることも多いので、長い文を読むときの切れ目になります。
「て」「で」も、助詞のほかに助動詞の活用形や、別の助詞がつまった形があります。
| 形 | 正体 | 見分ける手がかり | 例 |
|---|---|---|---|
| を・に・が | 格助詞 | 上が体言。上が連体形なら、下に体言を補える | 散るを見る(散る〈さま〉を) |
| を・に・が | 接続助詞 | 上が連体形で、体言を補えず、前後の文をつないでいる | 見るに、筒の中光りたり |
| に | 副詞の一部 | 取り除くと語にならず、活用もしない | すでに・つひに・げに |
| に | ナ変動詞の連用形の語尾 | 上が「死」「往(去)」 | 死にけり・往にけり |
| て | 接続助詞 | 下に用言や読点が続く | 寄りて見る |
| て | 完了の助動詞「つ」の未然形・連用形 | 下に助動詞や「ば」が続く | 食ひてけり・書きてむ |
| で | 打消の接続助詞 | 上が未然形 | 散らで |
| で | 格助詞(「にて」のつまった形) | 上が体言 | 舟で渡る |
分かれ目は次の 3 つ。
- 連体形の下の「を・に・が」は、「こと・とき・人・もの」などの体言を補って通じれば格助詞、補えなければ接続助詞。
- 接続助詞の「を・に・が」の意味は、形では決まらない。前の内容が後の理由になっているか、後が前から予想されることと食い違っているかで選ぶ。
- 「て」は接続助詞も完了の「つ」も連用形に付くので、上の語では決まらない。下の語で決める。
断定の助動詞・完了の助動詞・形容動詞の「に」の見分けは、「言語文化」のノートの「に」の識別にあります。ここでは、そこに無い型だけを足します。
1. 格助詞か接続助詞か
根拠: 学習指導要領 古典探究-(2)-イ
格助詞は体言に付く助詞ですが、古文では連体形の下の体言がよく省かれるので、連体形にも付きます。
接続助詞も連体形に付くので、上の語の活用形だけでは決まりません。下に体言を補えるかを試します。
連体形の下の「を・に・が」が、格助詞か接続助詞かは、どうやって見分けるか?
連体形の下に「こと・とき・人・もの・さま」などの体言を補って、文が通じれば格助詞。補えず、前後の 2 つの文をつないでいれば接続助詞
上が体言なら格助詞。接続助詞の「を・に・が」の下では、主語が変わっていることが多い。
例文 ①「花の散るを見て、歌を詠む。」と、②「都へ上らむと思ふを、障りありてえ上らず。」の「を」は、それぞれ格助詞か接続助詞か?
① は格助詞、② は接続助詞(逆接)
① は「散る〈さま〉を」と体言を補え、下の「見て」の対象になっている。② は「を」を受ける動詞が下に無く、「上京しようと思うのに、差しさわりがあって上京できない」と 2 つの文をつないでいる。
『更級日記』の「いと清げなる僧の、黄なる地の袈裟着たるが来て」の「が」は、接続助詞か格助詞か?
格助詞(主格。「〜が」と訳す)
「着たる」の下に「僧」を補え、下の「来て」の主語になっている。「たいそうきれいな僧で、黄色い地の袈裟を着ている僧が来て」。上の「僧の」の「の」は同格。
連体形の下の「が」を接続助詞と考えてよいのは、主にいつの時代からの文章か?
平安時代の末ごろから。それより前の『源氏物語』『枕草子』などでは、ふつう格助詞(主格・同格)として読む
接続助詞の「が」は格助詞の「が」から生まれたもので、中世の説話や軍記物語に多い。例文:昔は貧しかりしが、今は富めり。(昔は貧しかったが)
2. 接続助詞の「を・に・が」の意味を決める
根拠: 学習指導要領 古典探究-(2)-イ
接続助詞の「を・に・が」に、順接・逆接・単純接続の 3 つの意味があることは「言語文化」のノートで見ました。
ただし「が」は逆接か単純接続になるのがふつうで、順接(〜ので)で訳すのは主に「を」「に」です。
どれになるかは、前の内容と後の内容を比べて決めます。
接続助詞の「を・に・が」を、順接・逆接・単純接続のどれで訳すかは、前後の内容の何を見て決めるか?
前の内容が後の理由になっていれば順接(〜ので)。後の内容が、前から予想されることと食い違っていれば逆接(〜のに)。どちらでもなく、続いて起きたことを言うだけなら単純接続(〜と・〜ところ・〜が)
単純接続は、前の動作をきっかけに後のことに気づく文に多い。
例文「雨いたく降るに、え出でず。」の「に」は、順接・逆接・単純接続のどれか?
順接(「雨がひどく降るので、出かけることができない」)
雨が降ることが、出かけられないことの理由になっている。「降る」は四段活用の連体形。
『更級日記』の「十月つごもりなるに、紅葉散らで盛りなり」の「に」は、順接・逆接・単純接続のどれか?
逆接(「十月の末であるのに、紅葉は散らないで盛りである」)
十月の末なら散っているはずだ、という予想と食い違っている。上の「なる」は断定の助動詞「なり」の連体形。
『竹取物語』の「あやしがりて、寄りて見るに、筒の中光りたり」の「に」は、順接・逆接・単純接続のどれか?
単純接続(「不思議に思って、近寄って見ると、筒の中が光っている」)
見たことは光っていることの理由でも、食い違いでもない。上の「見る」は上一段活用の連体形で、「に」の前後で主語が翁から筒の中に変わっている。
3. 「言語文化」に無い「に」
根拠: 学習指導要領 古典探究-(2)-イ
「に」の 1 字を取り出す前に、上と合わせて 1 語になっていないかを確かめます。
副詞の一部と、ナ変動詞の語尾の 2 つは、助詞でも助動詞でもありません。
「すでに」「つひに」「げに」「まさに」の「に」は何か? 形容動詞の連用形の語尾とは、どう見分けるか?
副詞の一部。「〜なり」と言い切る形に直せなければ副詞
形容動詞なら「静かなり」「あはれなり」と活用する。「すでなり」「つひなり」とは言えないので、「すでに」「つひに」で 1 語の副詞。
例文 ①「夜更けて、人みな往にけり。」と、②「夜更けて、人みな帰りにけり。」の「に」は、それぞれ何か?
① はナ変動詞「往ぬ」の連用形「往に」の語尾、② は完了の助動詞「ぬ」の連用形
① は「に」を取り除くと「往」だけが残り、連用形にならない。② は上の「帰り」だけでラ行四段活用の連用形になっている。「死にけり」も ① と同じ。
4. 「て」と「で」
根拠: 学習指導要領 古典探究-(2)-イ
接続助詞の「て」と、完了の助動詞「つ」の未然形・連用形「て」は、どちらも連用形に付きます。上の語では決まらないので、下の語を見ます。
「で」は逆に、上の語が未然形か体言かで決まります。
「て」が、接続助詞か、完了の助動詞「つ」の未然形・連用形かは、下の語でどう見分けるか?
下に「む・まし・ば」(未然形に付く語)や「き・けり・けむ」(連用形に付く助動詞)が続けば完了の「つ」。用言や読点が続けば接続助詞
てむ・てまし・てば/てき・てけり・てけむ の「て」は助動詞。「てぞ」「ては」「ても」のように係助詞が続く「て」は接続助詞。
『伊勢物語』の「鬼はや一口に食ひてけり」の「て」は何か?
完了の助動詞「つ」の連用形
上の「食ひ」はハ行四段活用の連用形で、下に過去の助動詞「けり」が続く。「鬼は早くも(女を)一口に食べてしまった」(芥川の段)。
「で」の形を、上の語から 3 つに分けると?
上が未然形なら打消の接続助詞(〜ないで)。上が体言なら格助詞(「にて」のつまった形。〜で)。上が音便の形なら、接続助詞「て」が濁ったもの
例文:知らで過ぐ。(知らないで)/舟で渡る。/読んで聞かす。 格助詞の「で」と、音便の下の「で」は、中世より後の文章に多い。
「今はただ思ひ絶えなむとばかりを人づてならで言ふよしもがな」の「ならで」を分けると? どう訳すか?
断定の助動詞「なり」の未然形「なら」+打消の接続助詞「で」。「人づてでなく」
上が未然形なので、「で」は打消の接続助詞。「人を介さずに、直接言う方法があればなあ」(『後拾遺和歌集』、百人一首)。