産業革命
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領「世界史探究」D (2) ア (ア) の「産業革命と環大西洋革命,自由主義とナショナリズム,南北戦争の展開など」の最初の柱です。これらを基に「国民国家と近代民主主義社会の形成」を構造的に理解することが求められています。
0. 何を押さえるか
18 世紀後半のイギリスで、道具を使う手工業から、機械を使う工場制機械工業への転換が始まりました。これが産業革命です。綿工業で始まった機械化は、動力(蒸気機関)と交通(鉄道・蒸気船)に広がり、社会のしくみそのものを変えました。
| 分野 | 主な発明・できごと | 人物 |
|---|---|---|
| 織布 | 飛び杼(1733 年) | ジョン=ケイ |
| 紡績 | ジェニー紡績機・水力紡績機・ミュール紡績機 | ハーグリーヴズ・アークライト・クロンプトン |
| 織布の機械化 | 力織機(1785 年) | カートライト |
| 動力 | 蒸気機関の改良 | ワット |
| 交通 | 蒸気機関車・鉄道 | スティーヴンソン |
取り違えやすい分かれ目は次の 3 つ。
- 産業革命は綿工業(木綿)から始まった。イギリスの伝統的な毛織物工業ではない
- 蒸気機関を実用化したのはニューコメン、効率よく改良したのがワット。ワットが発明者なのではない
- 織布が速くなる(飛び杼)→ 糸が足りなくなる → 紡績機が次々に発明される、という連鎖で技術が進んだ
1. なぜイギリスで始まったか
根拠: 学習指導要領 世界史探究-D-(2)-ア-(ア)
イギリスには、資本・労働力・資源・市場という工業化に必要な条件がそろっていました。インドから輸入された綿織物(キャラコ)の人気が、国産化への強い動機になりました。
産業革命が 18 世紀後半のイギリスで最初に起きた条件を、資本・労働力・資源・市場の面から挙げると?
大西洋三角貿易などで蓄えた資本、囲い込みで生まれた労働力、豊かな石炭と鉄鉱石、広い海外植民地の市場
名誉革命後に議会政治が安定し、商工業に有利な政策がとられたことも背景にある。
18 世紀の第 2 次囲い込みは、産業革命にどうつながったか?
土地を失った農民が都市に出て、工場で働く労働者になった
囲い込みは穀物の増産をねらった大規模な農業経営(農業革命)でもあり、増えた都市人口を養う食料も支えた。
産業革命がまず綿工業で起きたのはなぜか?
インド産綿布への需要が大きく、国内で安く大量に作れば大きな利益が見込めたから
原料の綿花は輸入に頼り、製品はヨーロッパやアジア・アフリカへ売り込まれた。
2. 綿工業の機械化と蒸気機関
根拠: 学習指導要領 世界史探究-D-(2)-ア-(ア)
織る道具と紡ぐ機械が交互に改良され、やがて工場に集められました。動力は水車から蒸気機関に代わり、工場は川辺から炭田や都市の近くへ移りました。
1733 年にジョン=ケイが発明し、織布の速度を大きく上げた道具は?
飛び杼
布を織る速さが上がったことで糸が不足し、紡績の機械化を促した。
水車を動力とし、工場での大量生産を可能にした紡績機と、その発明者は?
水力紡績機、アークライト
ハーグリーヴズのジェニー紡績機は手動の機械。のちにクロンプトンが両者の長所を合わせたミュール紡績機をつくった。
ワットによる蒸気機関の改良は、工場の立地をどう変えたか?
水力に頼らなくなり、川辺でなくても工場を建てられるようになった
もとは炭鉱の排水に使われたニューコメンの蒸気機関を、ワットが効率よく改良し、機械を回す動力に広げた。
綿工業の中心として発展したイングランド北西部の都市は?
マンチェスター
近くの港湾都市リヴァプールが、綿花の輸入と製品の輸出を担った。
3. 交通革命
根拠: 学習指導要領 世界史探究-D-(2)-ア-(ア)
蒸気機関は乗り物にも使われ、原料と製品を大量に速く運べるようになりました。これを交通革命といいます。
1825 年、ストックトン・ダーリントン間で蒸気機関車を走らせた人物は?
スティーヴンソン
1830 年にはマンチェスター・リヴァプール間で鉄道が営業を始め、鉄道の時代が開かれた。
1807 年、ハドソン川で蒸気船を実用化したアメリカ人は?
フルトン
蒸気船はのちに大西洋航路にも使われ、人と物の大陸間の移動を速めた。
鉄道の建設が進むと、産業革命の中心はどの産業へ広がったか?
製鉄・機械・石炭などの重工業
レールや機関車に大量の鉄と石炭が要るため、軽工業(綿工業)から重工業へと工業化が進んだ。
4. 社会の変化と各国への波及
根拠: 学習指導要領 世界史探究-D-(2)-ア-(ア)
工場制機械工業のもとで、資本家と労働者という新しい階級が生まれ、都市には多くの問題が生じました。イギリスは「世界の工場」となり、産業革命はやがてヨーロッパ大陸やアメリカ、日本にも広がります。
産業革命によって生まれた資本主義社会の、2 つの新しい階級は?
産業資本家と工場労働者
資本家は工場や機械を持ち、労働者は賃金を得て働いた。資本家はやがて選挙権を求め、政治にも力を持つようになる。
19 世紀初め、機械が仕事を奪うとして手工業の職人らが機械を打ち壊した運動は?
ラダイト運動(機械打ちこわし運動)
長時間労働や低賃金、女性・子どもの労働も問題になり、1833 年の工場法などで少しずつ規制された。
労働者の状態を改善しようとして工場や協同組合を試みたイギリスの社会主義者は?
ロバート=オーウェン
のちにマルクスらは、オーウェンらの考えを「空想的社会主義」と呼んで、自らの考えと区別した。
イギリスの綿布の大量生産は、インドの経済にどんな影響を与えたか?
インドの手織りの綿布産業が衰え、インドは綿花を送り出し綿製品を買う側になった
かつて綿布を輸出していたインドが、イギリスの原料供給地・製品市場に変わった。
イギリスに続いて 1830 年代に産業革命が始まり、独立直後から工業化を進めたヨーロッパ大陸の国は?
ベルギー
石炭と鉄に恵まれていた。フランスも 1830 年代以降、ドイツは 1840 年代以降に工業化が進んだ。