過去と完了の助動詞
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
0. どういうまとまりか
過去を表す助動詞が 2 つ、完了を表す助動詞が 4 つあります。どれも(「り」を除いて)連用形につきます。
| 助動詞 | 意味 | 訳 | 例 |
|---|---|---|---|
| き | 過去(直接経験) | 〜た | 見き(私が見た) |
| けり | 過去(伝聞)・詠嘆 | 〜た・〜たそうだ/〜だなあ | 男ありけり |
| つ・ぬ | 完了・強意 | 〜た・〜てしまった/きっと〜 | 散りぬ(散ってしまった) |
| たり・り | 完了・存続 | 〜た/〜ている・〜てある | 咲きたり(咲いている) |
分かれ目は次の 3 つ。
- 「き」は自分が直接経験した過去、「けり」は人から聞いた過去。和歌や会話の「けり」は、今気づいた感動(詠嘆)が多い。
- 「つ・ぬ」の下に推量の助動詞がつくと強意(てむ・なむ・つべし・ぬべし=きっと〜)。
- 「ぬ」「ね」は、打消「ず」の活用形と形が同じ。直前の活用形と、「ぬ」「ね」自身の活用形で見分ける。
1. 過去の「き」と「けり」
根拠: 学習指導要領 言語文化-(2)-ウ
物語の地の文は、語り手が人から伝え聞いた昔の話として「けり」で語られることが多く、「昔、男ありけり」のように始まります。
一方、日記や回想で自分の体験を語るときは「き」が使われます。
過去の助動詞「き」と「けり」の違いは?
き=直接経験した過去(自分が見聞きしたこと)、けり=伝聞の過去(人から聞いたこと)
「き」は日記・回想、「けり」は物語の地の文に多い。
「けり」が詠嘆の意味になるのはどんなときか?
和歌や会話文の中で、それまで気づかなかったことに今気づいたとき。「〜だなあ・〜たことよ」と訳す。
例:「花の色はうつりにけりないたづらに」(花の色はあせてしまったなあ)。
過去の助動詞「き」の連体形と已然形は?
連体形「し」、已然形「しか」
「見し人(かつて会った人)」の「し」、「〜こそ見しか」の「しか」。サ変動詞の連用形「し」と取り違えない。
2. 完了の「つ」「ぬ」
根拠: 学習指導要領 言語文化-(2)-ウ
「つ」「ぬ」はどちらも完了(〜た・〜てしまった)を表します。
下に推量の助動詞が続くと、完了ではなく「きっと・確かに」と強める意味(強意・確述)になります。
完了の助動詞「つ」「ぬ」の 2 つの意味は?
完了(〜た・〜てしまった)と強意(きっと〜・確かに〜)
強意になるのは、下に推量の助動詞(む・べし など)が続くとき。
「雨降りなむ」の「な」は何の助動詞で、どう訳すか?
強意の「ぬ」の未然形。「雨がきっと降るだろう」
「な+む」「て+む」「つ+べし」「ぬ+べし」は、「つ・ぬ」が強意、下が推量。
「秋来ぬと目にはさやかに見えねども」の「来ぬ」の「ぬ」は何か?
完了の助動詞「ぬ」の終止形
「来」はカ変動詞の連用形で「き」と読む(「秋が来た」)。下の「と」は引用なので、「ぬ」は終止形。
3. 完了・存続の「たり」「り」
根拠: 学習指導要領 言語文化-(2)-ウ
「たり」「り」は完了も表しますが、動作が終わった結果が残っている状態(存続)を表すことが多く、「〜ている・〜てある」と訳します。
存続か完了かは、訳してみて自然なほうを取ります。
完了の助動詞「たり」「り」に多い、「〜ている・〜てある」と訳す意味を何というか?
存続
動作の結果が残っている状態を表す。完了(〜た)の意味もある。
「その沢にかきつばたいとおもしろく咲きたり」の「たり」はどう訳すか?
存続「〜ている」。「その沢にかきつばたがたいそう美しく咲いている」
(伊勢物語・東下り)
4. 「ぬ」「ね」の識別
根拠: 学習指導要領 言語文化-(2)-ウ
打消の「ず」は連体形が「ぬ」、已然形が「ね」で、完了の「ぬ」の終止形「ぬ」・命令形「ね」と同じ形になります。
見分ける手がかりは 2 つです。
| 形 | 打消「ず」 | 完了「ぬ」 |
|---|---|---|
| 直前の形 | 未然形 | 連用形 |
| 「ぬ」の場合 | 連体形(下に体言・係り結びの結び) | 終止形(文末・「と」の前) |
| 「ね」の場合 | 已然形(下に「ど・ども・ば」、こその結び) | 命令形(命令で文が終わる) |
直前が上一段・下一段・下二段などで未然形と連用形が同じ形のときは、2 つ目の手がかり(「ぬ」「ね」自身が何形か)で決めます。
「ぬ」が打消「ず」か完了「ぬ」かを、直前の語の活用形で見分けると?
直前が未然形なら打消「ず」の連体形、連用形なら完了「ぬ」の終止形
行かぬ(行かない)/行きぬ(行ってしまった)。
「京には見えぬ鳥なれば」の「ぬ」が打消だと分かるのはなぜか?
下に体言「鳥」が続き、「ぬ」が連体形だから(連体形が「ぬ」になるのは打消「ず」だけ)
「見え」は下二段で未然形と連用形が同じ形なので、直前の形では決まらない。「京では見かけない鳥なので」。
「ね」が打消「ず」か完了「ぬ」かを見分けると?
「ね」が已然形なら打消「ず」、命令形なら完了「ぬ」
下に「ど・ども・ば」が続く(見えねども)、または「こそ」の結びなら已然形で打消。命令で文が終われば完了(〜てしまえ)。
「ぬる」「ぬれ」の形を見たら、打消と完了のどちらか?
完了「ぬ」(連体形「ぬる」、已然形「ぬれ」)
打消「ず」の活用には「ぬる」「ぬれ」は無い。例:「風の音にぞおどろかれぬる」。