訓読のきまり
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
0. どういうまとまりか
漢文は中国語の文章なので、動詞が目的語より前に来ます(「読書」=書を読む)。これを日本語の語順で読むために書き添えるのが
返り点・送り仮名・句読点の 3 つで、この書き添え方の決まりを訓読のきまりといいます。
さらに、訓読では読まない字(置き字)と、書き下すときの仮名の決まりがあります。
| 決まり | 何を示すか | 例 |
|---|---|---|
| 返り点 | 読む順(下から上へ返るところ) | 読㆑書 → 書を読む |
| 送り仮名 | 活用語尾・助詞・助動詞(カタカナ・歴史的仮名遣い) | 学ビテ、言ハク |
| 句読点 | 文や語句の切れ目 | 学而時習之、不亦説乎。 |
| 置き字 | 訓読では読まないが、働きのある字 | 而・於・于・乎・矣・焉・兮 |
| 書き下し文 | 訓読文を漢字仮名交じり文に改めたもの | 助詞・助動詞の字はひらがなにする |
分かれ目は次の 3 つ。
- 返り点は「レ点 → 一二点 → 上下点 → 甲乙点」の順に外側へ包む。内側を読み終えてから外側へ返る。
- 一レ・上レは、まずレ点で 1 字返り、次に一・上として返る。
- 書き下し文では、日本語の助詞・助動詞にあたる字(不・可・也・之 など)はひらがなに開き、置き字は書かない。
この本文では、返り点を漢字のすぐ後ろに小さな記号(㆑ ㆒ ㆓ ㆔ ㆖ ㆗ ㆘ ㆙ ㆚)で書きます。
記号の字が出ない画面でも読めるよう、カードの答えには読む順か書き下し文と現代語訳を必ず添えてあります。
1. 返り点
根拠: 学習指導要領 言語文化-(2)-ウ
訓読のきまりのうち、読む順を決めるのが返り点です。漢文は上から順に読み、返り点の付いた字だけを飛ばして、後で戻って読みます。
返り点は内側から外側へ、次の順に使い分けます。
| 返り点 | 返り方 | 使う場面 |
|---|---|---|
| レ点(㆑) | すぐ上の 1 字へ返る | 1 字だけ返る |
| 一二点(㆒ ㆓ ㆔) | 一 → 二 → 三 の順に返る | 2 字以上離れて返る |
| 上下点(㆖ ㆗ ㆘) | 上 → 中 → 下 の順に返る | 一二点をはさんでさらに返る |
| 甲乙点(㆙ ㆚) | 甲 → 乙 → 丙 の順に返る | 上下点をはさんでさらに返る |
| 天地点 | 天 → 地 → 人 の順に返る | 甲乙点をはさんでさらに返る(まれ) |
一二点と上下点が同じ字に重なるときはレ点と組み合わせて 一レ(㆒㆑)・上レ(㆖㆑) と書きます。
返り点を、内側(先に使うもの)から外側へ順に 4 つ挙げると?
レ点 → 一二点 → 上下点 → 甲乙点
一二点をはさんで返るときに上下点、上下点をはさんで返るときに甲乙点を使う。その外側に天地点がある。
上下点をはさんで、さらに上の字へ返るときに使う返り点は?
甲乙点(甲 → 乙 → 丙 の順に返る)
一二点 ⊂ 上下点 ⊂ 甲乙点 と、内側から包む順に使う。
一レ点(㆒㆑)の付いた字は、どういう順で読むか?
まずレ点に従い、すぐ下の 1 字を読んでからその字を読む。次に「一」として「二」の字へ返る。
例: 不㆓復見㆒㆑之 → 読む順は 復 → 之 → 見 → 不。書き下し「復た之を見ず」(二度とこれを見ない)。
「不㆘為㆓児孫㆒買㆖㆑田」(「不」に下、「為」に二、「孫」に一、「買」に上レ)を読む順に並べると?
児 → 孫 → 為 → 田 → 買 → 不
書き下し「児孫の為に田を買はず」(子や孫のために田を買わない)。上レの「買」は、レ点で「田」を先に読み、次に上として「不」へ返る。
「有㆘朋自㆓遠方㆒来㆖」(「有」に下、「自」に二、「方」に一、「来」に上)を書き下すと?
朋遠方より来たる有り(読む順は 朋 → 遠 → 方 → 自 → 来 → 有)
論語「学而」。友人が遠くからやってくることがある。「自」は「より」と読み、助詞なので書き下しではひらがなにする。
2. 送り仮名と句読点
根拠: 学習指導要領 言語文化-(2)-ウ
送り仮名は、漢字の右下にカタカナで、歴史的仮名遣いで書きます。活用語尾と、日本語で補う助詞・助動詞を示します。
句読点は、白文には無い文や語句の切れ目を示すもので、訓読文で付け加えます。
送り仮名は古文の文法(文語)で付けるので、「言ふ」は「言フ」、「思ひて」は「思ヒテ」と書きます。
訓読文の送り仮名は、何の文字で、どの仮名遣いで書くか?
カタカナで、歴史的仮名遣いで書く。
例: 「曰はく」は「曰ハク」、「習ふ」は「習フ」。文法は古文(文語)の文法に従う。
「学而時習之、不亦説乎。」の「、」「。」のように、訓読文で文や語句の切れ目を示すために付け加えるものを何というか?
句読点
白文には無く、訓読文で付け加える。書き下し「学びて時に之を習ふ、亦説ばしからずや」(学んで折にふれてそれを復習する、なんとうれしいことではないか)。
3. 置き字
根拠: 学習指導要領 言語文化-(2)-ウ
置き字は、白文にはあるのに訓読では読まない字です。読まないだけで、働き(接続・場所・比較・語調)は送り仮名に移して表します。
| 置き字 | 主な働き | 送り仮名への移し方 |
|---|---|---|
| 而 | 接続(順接・逆接) | 前の字に「テ」「シテ」「モ」「ドモ」を送る |
| 於・于・乎 | 場所・対象・比較・受身 | 後の語に「ニ」「ヨリ」「ヲ」を送る |
| 矣・焉 | 文末で断定・強調 | 読まない(語調を整える) |
| 兮 | 詩で語調を整える | 読まない |
訓読のときに読まない字を何というか? 代表的な字を 3 つ挙げると?
置き字。而・於・于・乎・矣・焉・兮 など。
読まない代わりに、その働きを前後の字の送り仮名(テ・ニ・ヨリ など)で表す。
「学而時習之」の「而」は訓読でどう扱うか?
読まない(置き字)。前の「学」に送り仮名「ビテ」を付けて接続を表す。
書き下し「学びて時に之を習ふ」(学んで折にふれてそれを復習する)。論語「学而」。
「良薬苦於口」の「於」は訓読でどう扱うか?
読まない(置き字)。後の「口」に送り仮名「ニ」を付けて対象を表す。
書き下し「良薬は口に苦し」(よく効く薬は口に苦い)。
「力抜山兮気蓋世」の「兮」は訓読でどう扱うか?
読まない(置き字)。詩の語調を整える字。
書き下し「力は山を抜き気は世を蓋ふ」(力は山を引き抜き、気力は世を覆うほどだ)。史記「項羽本紀」の項羽の歌。
4. 書き下し文の決まり
根拠: 学習指導要領 言語文化-(2)-ウ
書き下し文は、訓読文を漢字仮名交じりの文語文に改めたものです。送り仮名はひらがなに直し、歴史的仮名遣いのまま書きます。
日本語の助詞・助動詞にあたる字はひらがなに開き、置き字は書きません。
| 字 | 書き下しでの形 | 働き |
|---|---|---|
| 不・弗 | ず | 打消の助動詞 |
| 可 | べし | 可能・当然の助動詞 |
| 也 | なり | 断定の助動詞(文末) |
| 之 | の | 助詞(「之を」と代名詞で読むときは漢字のまま) |
| 与 | と | 助詞(並列) |
| 自・従 | より | 助詞(起点) |
| 乎・哉・也・与・邪 | か・や・かな | 文末の助詞(疑問・反語・詠嘆) |
書き下し文にするとき、送り仮名は何の文字にするか?
ひらがなにする(仮名遣いは歴史的仮名遣いのまま)。
訓読文の送り仮名はカタカナだが、書き下し文ではひらがなに改める。
書き下し文で、漢字のまま残さずひらがなに開く字はどんな字か?
日本語の助詞・助動詞にあたる字(不=ず、可=べし、也=なり、之=の、与=と、自=より など)。
置き字(而・於 など)は書き下し文に書かない。
「過而不改、是謂過矣。」(「不」と「謂」にレ点)を書き下すと?
過ちて改めざる、是を過ちと謂ふ。
置き字の「而」「矣」は書かず、「不」は助動詞なので「ざる」とひらがなにする。訳: 過ちを犯して改めないこと、これを本当の過ちという(論語「衛霊公」)。