本歌取りと見立て
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
0. どういうまとまりか
本歌取りと見立ては、どちらも目の前の歌に、もう 1 つの像を重ねる技法です。
本歌取りは昔の歌を重ね、見立ては別の物を重ねます。
| 本歌取り | 見立て | |
|---|---|---|
| 何を重ねるか | よく知られた古歌(本歌)の語句 | ある物を別の物になぞらえた姿 |
| 例 | 万葉集の歌の「佐野のわたり」を取り入れる | 紅葉を錦に、雪を花に、雪明かりを月の光に |
| 効果 | 本歌の情景や心が背後に重なり、歌の世界が重層的になる | 見慣れた景色が新しい姿で見え、美しさが強調される |
分かれ目は次の 3 つ。
- 本歌取りは、読み手が本歌を知っていることが前提。だから誰もが知る有名な古歌から取る。
- 本歌取りの答えは「本歌」と「取り入れた語句」の 2 つで答える。
- 見立ては「A を B に見立てる」の A と B を取り違えない。目の前にある実物が A、なぞらえた物が B。
1. 本歌取り
根拠: 学習指導要領 言語文化-(1)-オ
本歌取りは、有名な古歌の語句を自分の歌に取り入れて、もとの歌の情景や心を背後に重ねる技法です。
取り入れたもとの歌を本歌といいます。短い和歌に、本歌の分の奥行きが加わります。
「本歌取り」とは何か?
よく知られた古歌(本歌)の語句を取り入れて、その情景や心を背後に重ねる技法。
本歌取りの効果は何か?
本歌の世界が新しい歌の背後に重なり、歌の内容が重層的(奥行きのあるもの)になる。
短い 31 音に、本歌の分の情景や心を加えられる。
本歌取りが特に盛んに行われた時代と、その代表的な歌人は?
新古今和歌集の時代(平安時代末〜鎌倉時代初め)、藤原定家。
藤原定家「駒とめて袖うちはらふかげもなし佐野のわたりの雪の夕暮」の本歌はどの歌集の歌か? 取り入れた語句は?
万葉集の歌「苦しくも降り来る雨か三輪の崎佐野のわたりに家もあらなくに」が本歌で、「佐野のわたり」を取り入れている。
本歌の雨の中の旅を、雪の夕暮の情景に作り替えている。
本歌取りの本歌に、有名な古歌が選ばれるのはなぜか?
読み手が本歌を知っていて、語句から本歌を思い起こせることが前提だから。
本歌が分からなければ、重ねた情景や心が伝わらない。
2. 見立て
根拠: 学習指導要領 言語文化-(1)-オ
見立ては、目の前にある物を、姿や色の似た別の物になぞらえて詠む技法です。
「〜は…なりけり(〜は実は…だったのだなあ)」「…と見るまでに(…かと見えるほどに)」といった言い方で表れることが多く、
見慣れた景色を新しい姿で見せ、その美しさを強く印象づけます。
「見立て」とは何か?
目の前にある物を、姿や色の似た別の物になぞらえて表す技法。
(例)散る花を雪に、紅葉を錦に見立てる。
見立ての効果は何か?
見慣れた物を別の物として見せることで、新鮮な驚きを生み、その美しさを強く印象づける。
和歌の見立てによく表れる言い方を 2 つ挙げると?
「〜は…なりけり」(〜は実は…だったのだなあ)、「…と見るまでに」(…かと見えるほどに)。
「嵐吹く三室の山のもみぢ葉は竜田の川の錦なりけり」は、何を何に見立てているか?
竜田川に散り浮かぶ紅葉を、錦(色とりどりの美しい織物)に見立てている。
「山川に風のかけたるしがらみは流れもあへぬ紅葉なりけり」は、何を何に見立てているか?
川にたまって流れきれない紅葉を、風がかけたしがらみ(川の流れをせき止める柵)に見立てている。
「朝ぼらけ有明の月と見るまでに吉野の里に降れる白雪」は、何を何に見立てているか?
明け方の吉野の里に白く降り積もった雪を、有明の月の光に見立てている。
「ちはやぶる神代も聞かず竜田川からくれなゐに水くくるとは」は、何を何に見立てているか?
紅葉が一面に浮かんで流れる竜田川を、真っ赤な色で括り染めにした布に見立てている。