遺伝子を扱う技術
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
根拠は高等学校学習指導要領(平成30年告示)「生物」の内容 (3) ア (ウ) ㋐「遺伝子を扱う技術」。
内容の取扱いは「制限酵素、ベクター及び遺伝子の増幅技術に触れること。また、それらが実際に
どのように用いられているかについても触れること」を求めている。
0. どういう論点か
遺伝子を扱う技術は、切る・つなぐ・運ぶ・増やす・見るの 5 つに整理できます。
| したいこと | 使うもの |
|---|---|
| 決まった配列で切る | 制限酵素 |
| 切ったものをつなぐ | DNA リガーゼ |
| 細胞に運び入れる | ベクター(プラスミドなど) |
| 目的の部分だけ増やす | 遺伝子の増幅技術(PCR 法) |
| 長さで分けて見る | 電気泳動 |
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 制限酵素は決まった塩基配列だけを切る(どこでも切るのではない)
- PCR で使う DNA ポリメラーゼは耐熱性(95 ℃ に上げる工程があるため)
- 電気泳動で DNA は陽極へ動く(DNA が負に帯電しているため)
1. 切る・つなぐ・運ぶ
根拠: 学習指導要領 生物-(3)-ア-(ウ)-㋐
DNA の特定の塩基配列を認識して切断する酵素を何という?
制限酵素
もとは細菌が、侵入したウイルスの DNA を切るためにもつ酵素。
制限酵素はどこでも切れる?
切れない。決まった塩基配列のところだけを切る
認識する配列は酵素の種類ごとに違う。
同じ制限酵素で切った DNA どうしがつなぎやすいのはなぜ?
切り口の形(突き出た一本鎖部分)が相補的になるから
この切り口を粘着末端という。
切り出した DNA 断片をつなぐのに使う酵素は?
DNA リガーゼ
複製でラギング鎖の断片をつなぐ酵素と同じもの。
目的の遺伝子を細胞に運び入れるための、運び屋となる DNA を何という?
ベクター
大腸菌のプラスミドやウイルスが使われる。
プラスミドとは?
細菌がもつ、染色体とは別の小さな環状 DNA
自分で複製でき、細菌どうしで受け渡される。
目的の遺伝子をベクターに組み込んで細胞に導入する技術を何という?
遺伝子組換え
ヒトのインスリン遺伝子を大腸菌に入れて作らせる、といった利用がある。
ヒトの遺伝子を大腸菌に入れても同じタンパク質が作れるのはなぜ?
遺伝暗号(コドン)がほぼ全生物で共通だから
ただし真核生物の遺伝子はイントロンを除いたもの(cDNA)を使う必要がある。
2. 増やす・見る
根拠: 学習指導要領 生物-(3)-ア-(ウ)-㋐
目的の DNA 領域だけを大量に増やす技術を何という?
遺伝子の増幅技術(PCR 法)
ごく微量の DNA からでも解析できるようになった。
PCR 法の 1 サイクルは、どの 3 段階?
①熱で 2 本鎖を 1 本ずつに分ける ②プライマーを結合させる ③DNA ポリメラーゼで伸ばす
これを繰り返すことで、DNA が倍々に増える。
PCR 法で耐熱性の DNA ポリメラーゼを使うのはなぜ?
95 ℃ 前後まで加熱する工程があるから
ふつうの酵素では変性して失活してしまう。温泉や熱水噴出孔にすむ細菌から得られた。
PCR で増やす範囲を決めているのは何?
プライマー
2 種類のプライマーで挟まれた領域だけが増える。
PCR を n サイクル行うと、DNA は理論上何倍になる?
2ⁿ 倍
20 サイクルでおよそ 100 万倍になる。
DNA 断片を長さによって分ける方法は?
電気泳動
ゲルに電圧をかけ、断片の移動距離の違いで分ける。
電気泳動で DNA はどちらの極へ移動する? なぜ?
陽極へ。DNA のリン酸が負に帯電しているから
短い断片ほど速く、遠くまで移動する。
制限酵素で切った DNA を電気泳動にかけると、何が分かる?
断片の長さのパターン
個人によって違うので、親子鑑定や個人識別に使われる。
3. 何に使われているか
根拠: 学習指導要領 生物-(3)-ア-(ウ)-㋐
遺伝子組換え技術で作られている医薬品の例は?
インスリン・成長ホルモン・ワクチンなど
大腸菌や酵母に作らせることで、安定して供給できる。
ある遺伝子がいつ・どこで発現しているかを調べるのに使われる、光るタンパク質は?
GFP(緑色蛍光タンパク質)
オワンクラゲ由来。目的の遺伝子とつなぐことで発現部位が見える。
PCR 法が感染症の検査に使われるのはなぜ?
ごく微量の病原体の遺伝子でも、増やせば検出できるから
配列が分かっていればプライマーを設計できる。
遺伝子組換え作物には、どんな性質を与えたものがある?
除草剤への耐性や、害虫に対する抵抗性など
導入する遺伝子を選ぶことで、目的の性質を与える。
遺伝子を扱う技術には、どんな注意が必要とされる?
生態系への影響や、個人の遺伝情報の扱いへの配慮
技術が何をできるかとは別に、どう使うかの判断が要る。